Voice story

□幸福伝染病
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「ふあーわ」
「ふあー」


お気に入りのソファの上で2人仲良く並んで微睡む昼下がり。
裕が欠伸をすると、それに続くように私も欠伸をした。


「欠伸って移るよねぇ」


私はポツリと呟いた。


「そー?」
「そうだよ〜」


首を傾げる彼。
共感を得られなかった事にちょっぴり不満を覚えつつ私はさらに話を続けた。


「隣で誰かがしてたら自分も意志とは無関係に眠たくも無いのにしちゃったーって思うことあるでしょ〜?」
「まぁ あるにはあるわな」


誘導尋問のような言い方だったのにも関わらず、何ともそっけいない賛同。
私が期待していた結果には終わらなくて。
こうなったら是が非でも裕の共感を得たくなるというものだ。
そこで、彼の顔を覗き込んで同意を求めてみる。


「あるよねっ?ね?」
「えー、人によるんじゃねーの?」


この答えにどういう意味かを私は頭を悩ませてみる。


「どゆこと〜?」


だけど分からなくて。
すると、彼は先程のダルそうな返事とは打って変わって私の目を見つめて言った。


「想い合ってる同士にしかそういうのは移んねえよ」
「?」


それでも尚首を傾げる私に彼は、少し笑って応える。


「だからー、俺はお前が好き。風香は?」
「私も。裕が好き」
「ん、そゆこと」


頭に置かれた手からじんわりと愛情が伝わってきて。
ようやく彼の言葉の意味を理解する事が出来た。


「分かった!要するに一心同体なわけだね!」


得意げな私の答えに裕は考える素振りを見せた後、


「そうかもな」


と ふっと優しく笑った。
それに吊られてまた私も笑みが零れた。





共感を得られた喜びと
相思相愛の喜びと 。



幸福伝染病
ーそれは幸せな病ー



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