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□再会
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紅茶のおかわりを淹れに行ってくれた高橋さんの背中を眺めていると、部屋の隅に硬い鉄製の扉が目に入った。


(なんだろう)


この部屋がカントリー風だっただけにあまりの不自然さが気になった。
高橋さんに聞けば良いのだが、何故か自分で確かめてみたいと思った。

椅子を立ち、その扉の方へと歩みを進める。
扉のノブはとても頑丈で簡単には開けられそうもない。
勝手に開けるのはどうかとは思ったが何故か無性に扉の先が見たくなった私は全力でノブを回した。
すると何とか開けることが出来た。


(なに、ここ...)


そこは色のない部屋だった。
全てが白で統一されて一言で表せば、殺風景だ。

そして、至る所にある何かを繋ぐ配線たち。
それを辿って、私は愕然とした。
透明なケースの中で眠っている1人の少年がいることに。


「どういう、こと.....?」


それが普通の見知らぬ少年だったら私はこの非現実的さと怪異さに驚くだけだったのだが、
目の前で横たわっているのは、あの日の少年だ。

マリンブルーの瞳に綺麗な顔、透き通った素肌。
間違いなんかじゃない。

思わずケースに手を触れてみる。

その時だった。

プシューーーという大きな音と共にケースの蓋が勢いよく開いた。


その瞬間私は自身の行動を心底後悔した。
どうしようという不安から微かに汗ばむ。


すると目を閉じて静かに横たわっていた少年が、パチリと目を開けてゆっくりと起き上った。


「....」

辺りを見回して瞬きをしたのち、私をじっと見つめて言った。



「君はあの時の..」

「お、覚えてるんだね?」

「うん、よく覚えている。何故だか記憶に深く刻まれているんだ。」


先ほどこの中で数々のコードに繋がれて眠っていた少年が普通に話している。
私は不思議さに飲み込まれる。


「...ところで、君は何故こんな所に居るの?此処はボクの関係者以外、入室禁止のはずなんだけど?」


ぐっと言い詰められて私はどぎまぎしてしまう。

「えっと、その..。」

「てっきり博士かと思って起きたのに。..あ、博士。」


少年の目の先に振り返ると、白衣の長身男性が立っていた。


「やぁ、お嬢さん。どうして君は此処にいるんだい?」


表情は笑っているが目は笑っていない、というやつだ。
なんとも言えない威圧感に怖気付く。

(ひっ?!)


「博士、この子はボクの知り合いだから大丈夫だよ。」

「ああ、そうなのかい。...じゃあもう知っているのか?」

「..そうだよ」

「おっとそれは失礼したねお嬢さん、ではご内密に頼みますよっと。」


知ってる?内密?
一体何のことを言っているのか訳がわからない。


それだけ言って博士という男性は奥の部屋へと消えていった。


束の間の沈黙の後、口を開いたのは彼の方だった。


「..ボクの事、君は今疑問に思っているでしょ?」


私は小さく頷く。


「まだ、教えられない。でもいずれ君にも知ってもらう事になるかもしれない」



そう言って彼は目を伏せた。








meet again



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