Voice story

□Love change!
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収録が終わった後、俺は監督と芝居の細かいところを質問していた。
随分と熱が入ってしまい、話し込んでしまった。
辺りを見渡すと さっきまで椅子で女性声優と話して居たはずの水野の姿が消えていた。
念の為 彼の姿も探してみるとまた彼の姿も無かった。


(...!)


「水野知らねぇか?!」
「え?風香ならさっき宮野さんと出て行きましたけど...って、あ ‼」


俺はブースを飛び出した。
気付いたら彼女の姿を探していた。
階段を足早に降りてあらゆる場所を回った。


「どこだよ..」


だがどこにも見つからない。

気付いたら自分でも笑ってしまうほど必死な自分がいた。


「何やってんだ俺...」


我に返った俺は探すのを辞めた。

窓にもたれ、ふと外の景色を眺める。
夕焼けが反射して風が近くの木を揺らしそれは美しい。

それにしても自分がこんなに理性を保てなくなるなんて思わなかった。
こんなに想っていたなんて。
本当に好きなんだ。


(...!)


視線を木に移した瞬間、探し求めていた姿があった。

水野だ。
木陰のベンチに腰掛けている、が、その隣には彼の姿がある。
何故か嫌な予感がした俺は再び階段を降り、2人の元へ急いだ。









2人に話しかける勇気が無くて俺は木に体を潜めていた。
何も隠れて盗み聞きをする事もないだろうに と我ながら思っていたが。

暫く2人を見守っていた。
2人は時々笑ったり、話が盛り上がっているような感じで。
俺が心配していた様な内容では無くホッと胸を撫で下ろす。
そんな時だった。


「..あ、そうだ!話って何だったの?」


マモちゃんがそう聞いた瞬間に明らかに彼女の顔つきの変化に俺は気付いた。
明らかに先ほどとは違う表情を見逃さなかった。
頬を赤く染め、少し戸惑いが見られる。


「あの..宮野さん、」
「うん?なーに?」


「私..前から宮野さんの事が......」
「え ⁇」





「好きなんです」








(まずい ‼‼)

そう思った時にはもう既に遅かった。
体の力が一気に抜け、全身に嫌な刺激が走り抜ける。

とうとう彼女は伝えてしまった。
実際、近くから見守っている俺は止める事も出来たはずだ。
なのにあと一歩のところで手を引っ込めてしまうんだ。

でも、どうなる ?
マモちゃんも確実にOKするだろう。
そうなればもう俺は水野の笑った顔を見られなくなるのか?
もう2度と彼女の姿を追うことが出来なくなる?
水野を想うこの気持ちとこれから先ずっと抱え込んで生きていくっていうのか?




そんなの、嫌に決まっている ‼‼






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