Voice story

□ブルーバード
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彼は最近、大人気乙女ゲームの新キャラクターの1人を演じた事によってメディアから注目を浴びるようになり、ここ1ヶ月全く会えない日が続いている。
すごく、大変だと思う。
それでも、優しい彼はどんなに忙しくても疲れていても、毎日おはようとおやすみのメールを欠かさず送ってくれていた。

だけど…


「やっぱり‥寂しいな‥」


私は会えない寂しさを感じていた。


「会いたいよ‥翔太ー‥」


そう呟いた時だった。


♪〜♪〜

突然携帯が鳴った。
翔太の着信の時しかならない着メロ。
目を擦ってみてもディスプレイには"翔太"の文字。


「えっ!!嘘‥」


ビックリしながらも携帯を取り、通話ボタンを押すと、ずっと聴きたかった声が耳に伝わってきた。


「あっふうか?翔太だけど、今会えない?僕らが出会った場所で待ってるからっ」


ツーツーツー


そこで電話は切れた。


"待ってるから"


久しぶりに聞いた翔太の声‥。
何故かすごく懐かしく思える。


「会えるんだ‥」


私は急いでカフェに向かった。




------------------



カランカラン


「いらっしゃいませ‥あっお久しぶりです。彼‥来てますよ」
「ありがとうございます」


閉店1時間前だからか店内は私と‥、
いつもの窓際のカウンター席に座っている彼しかいなかった。


「カフェモカ、ですよね。お作りしますね。」
「はっはい」


分かってます。とばかりに店員さんがいつものカフェモカを作ってくれた。


「はい、どうぞ。…楽しんで下さいね」
「はい…ありがとうございます。」


店員さんに微笑まれながら彼の元へと‥


「翔太…」
「久しぶりふうか」


久しぶりに見た彼の笑顔に私は早くも目頭が熱くなった。


「うん。久しぶり」


隣の椅子に腰掛け、カフェモカに口を付けると
すぐに口内には飲み慣れた甘さが広がった。


「いつもだったよね」
「え‥?」
「いつもカフェモカを頼んで、その席に座ってさ」
「そうだね。でも翔太こそいっつもそれじゃん」


彼が飲んでいるキャラメル系のドリングを指差し笑う。
そうやな、と彼も笑った。


「最近、仕事どう?」


私は忙しそうな翔太に質問する。


「有り難いことに結構色んな仕事もらってるよ、あぁそうだ!これ来月発売するドラマCD。」


翔太が何か思い出したようにカバンの中を探り、
一枚のCDを取り出した。


「ツキ‥ウタ?」
「うん、色んな
キャラがあるんだけど、そのひと月を僕が担当させてもらったんだ」


そう言って手渡すと、
“最初にふうかに聞いて欲しかったから”と微笑んだ。


「そっか凄いね。ありがとう!大切に聞くね」


翔太ずっと頑張ってたんだなぁ。
最初に私に聞いて欲しいと言ってくれた事が嬉しかった。


「あのさ…」


翔太が急に改まったように真剣な顔つきになって私に向き合う。


「俺はまだまだ声優としても歌手としても半人前だし、ふうかに辛い思いをさせるかもしれない」
「うん‥」
「でも、それでもぼくはふうかにはずっと笑っていて欲しいし、幸せでいて欲しいんだ、だからね‥」


そう言うと翔太が服の胸ポケットから小さな箱を取り出し、開ける‥


「え‥?」
「予約、していい?」


それは綺麗な指輪だった。
シルバーリングに青い羽のようなサファイアがついている。


「…!」
「風香さん、ぼくはずっとふうかを包み守っていきたい。君だけのブルーバードでいさせてください…!」
「…っ!」


こ、これってプロポーズ、だよね…??
翔太が、こんな私なんかに真剣な眼差しで伝えてくれている事が幸せで視界が滲んだ。


「うそ、だよね…どうしよ…っわた、し…っうれしく、て…っ」

後から後から熱い雫が私の頬を濡らしていって。
翔太の顔が涙で歪んで見えている。
そんな私を見て、翔太は呆れながらも涙を拭ってくれて。


「返事、聞かせてくれる‥?」


と心配そうな顔で聞いてきた。
答えなんてとっくに決まってる。
翔太と出会ったあの日から。


「はい‥っ!」


私は思い切りの笑顔で頷いた…ー。






ブルーバード

幸せを運んでくれる青い鳥

(そうだ、今度ミニアルバムも出すんだ((ごそごそ
(えぇっ!!)






→あとがき☆
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