Voice story

□summer spirit
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「あちぃ〜〜〜」


厳しい残暑で溶けそうな私は彼に抱きつく。
声優である彼を気遣い、クーラーの設定をドライにしているのだ。


「暑い時に抱きついたら余計暑いやん」
「なんかしょーたから冷気が纏われてる気がして」
「え、俺何者なの(笑)」


そう言って笑うと頭を撫でてくれる。


「明日はついに夏魂だね」
「うん、本当に楽しみだよ」
「何するの??」
「それは秘密〜」


明日行われる初のFCイベントに私も行くことになっている。
彼女である私にもあくまで一ファンとして内容に関して秘密を貫く彼は本当に立派なパフォーマーだなと思う。


「そっか。私も楽しみにしてるね!」
「うん!期待しといて」


2人で笑い合う幸せな時間。


「しょーた。まだ、時間ある?」
「んっと、あと10分くらいかな」
「そっか..。」


初日の明日は大阪である為、前泊をしなくてはならない。
昨日はCD発売記念のリリースイベントだったし終わってからも事務所に寄っていて帰りが遅かった。
この後も大阪に着いたらリハーサル等の最終チェックがあるので休む間もないだろう。
だからまだ家にいる間だけでも安らいでいて欲しいな。


「そうだ!しょーた、ちょっとソファーにうつ伏せになって」
「え?」
「いいからいいからっ」
「わぁ!ちょ!」


彼を軽く押し倒してうつ伏せにさせると、親指を肩から背中へ力を入れてなるべく優しく押していく。


「どうかな?痛くない?」
「あ〜いいよ、うん。気持ちいい」
「本当?!よかった!!」


ほころんだ表情を見せる彼を見て嬉しくなった私はさらに精を出す。


「ん〜でもな〜、なんか違うんだよな〜」
「どうしたの?」
「よいしょっと!」


指先を首にかけた時、急に彼が方向を変えて私を抱えて仰向けになった。


「ひょえ?!!?」
「..あ、こっちの方がいい」


私は彼に抱き抱えられる形になり、恥ずかしさが込み上げる。


「嫌だ、何かこれ..恥ずかしいよ?」
「え、そう?俺はこっちのが落ち着くよ。」


彼の胸元に耳が当たり、鼓動がドクドクと規則正しく聞こえてくる。
そこに手を当てると心地よさを感じた。


「ほんとだ、落ち着くね」
「でしょ〜?...風香、」
「ん??」

「明日、会場で待ってるね」
「..うん。行ってらっしゃいっ」


満面の笑みを浮かべながら私を優しく離し、起き上がると彼は部屋を後にした。

彼が去った部屋には不思議と寂しさは無く、
ほっこりとした温かさが私の胸に残った。








夏 魂
風香(ああ〜明日楽しみだなぁ〜)
翔太(まだ風香と離れなくなかった...けど明日また会えるから我慢我慢っ!)





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