ひとつ

□薬品
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「んにゅ……ふぁ…」


「ったく…俺も眠いのに。」



重くなる瞼を一生懸命開け、千明の髪の毛を乾かしている。サラサラと言うよりフワフワ。まるで猫。猫っ毛ではないけど猫っぽい。


いや、猫の耳みたいな手触り。



あ、あと足の甲とか。




学生の為染められない黒い髪の毛は、千明の長いまつ毛に似合っていた。






カチリとドライヤーのスイッチを切り、洗面台に行こうとした。







ぎゅむっ





「ふぬぉぉぉぉ…!」



俺は必死に声を押し殺した。
叫んでしまえば千明が起きてしまう。

しょうがない、可愛いんだから。
それを我慢している俺を褒め称えて欲しい。




俺のスウェットの端っこをちょいーんと握っている。



「…しょうがないね。」







俺は千明の頭を胸に押し付け、狭いベッドに二人で寝た。



























______




…あれ?



……朝?




弘樹がいない…
昨日は確かに一緒に寝たはず。


そして何故か素直に動いた口



でも今は、喋れない。


何で?







ガチャッ





弘樹!!




「…ちあ……え?」




こっちを見て驚いている弘樹。






「…あんた…千明か?」


え、酷くね?


そう思った俺は、馬鹿野郎と叫ぼうとした。朝練もあるから早くしないといけないのに。





「……みゃぁ」





……は!?


「答えたって事は千明だよね?」



「みゃ、…んにゃぁ…!」



「よしよーし…猫になったら素直になりなさーい。」



アホか!


ってか何で猫になってんの!?



「千明、冷蔵庫の麦茶…たしか飲んでたよね?」



「にゃ?」



「…あれの中に猫化する薬品いれてたんだ。」


思い出した様に言う弘樹は、悪気がある様には見えなかった。


「馬鹿だねー千明は。
勝手に何かやるとこうなるってわかんなかったの?」



尻尾を軽く握られ、そのまま根本から先へと手を動かした。



「ぅにゃ……ぁ…」





「あ…良い事思いついた…。


買い物行ってくるから良い子にしててね。」



「にゃっ…にゃぁあ!」



叫びたくても、叫べない。
普段素直になっていれば…もっと好きって言えたかもしれない。このまま戻れないのかな。



弘樹…





















好き…。










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