ひとつ
□薬品
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「風呂あいたよー。」
「ん、さんきゅ。」
風呂上がりで腰にバスタオルを巻いただけの弘樹はとてつもなくエロい。俺でさえ興奮してしまう。
そんな事を思いながら、俺は風呂場へと向かった。
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俺は千明が風呂場に行ったのを確認し、ハンガーにかけてある白衣のポッケから小瓶を取り出した。さっき見せつけた小瓶だ。
…千明に試してみようと思ったけど…速攻拗ねられそうだな。
この薬は素直じゃないやつが甘えるようになる薬。まぁまだ試作品だけど。
冷蔵庫から缶ビールを出し、テレビを見ながら飲んだ。
俺、アル中じゃないから。
一日二本って決めてるから。
しかも一本はノンアルだから。
くだらない自問自答を繰り返してると、風呂場から戸惑いの声が聞こえた。
その声に反応した俺は、すぐに風呂場に行った。
「千明、大丈夫か?」
ドア越しに話しかけると、
千明は震える声で言った。
「スウェット…部屋に忘れた。」
「あー…うん。
とってきてやるから、風呂に浸かってな。寒いし。」
「……ありがとな。」
お、珍しい。
千明が素直に礼を言うなんて。
千明の部屋に行くと、ベッドの上に綺麗にたたまれたスウェットがあった。
そのスウェットを抱え、俺は風呂場に戻った。
脱衣所に千明はいなく、水音がちゃぷちゃぷと聞こえていた。
ガラッ
「うっ!?…急にはいんなよ!」
「ごめんごめん。
ま、持ってきたから早く着替えな。明日朝早いんでしょ?」
「ん…あ、着替えるから…。」
「分かってるよ、出てけばいいんでしょ。」
「…うん。」
顔を真っ赤にした千明をギュッと抱きしめたい衝動を抑え、俺は脱衣所から出ていった。
足音が聞こえ、
モサモサと髪の毛を拭く音がした。
そして俺は悪知恵が働いた。
「んじゃ、俺寝てるわ。
ちゃんとドライヤーするんだよ。」
千明のツンデレが見たい。
ツンデレって言うよりツンツン?
「ふぇっ…ま、待って!」
「…は?」
「ごめっ…でも…、一緒に寝たくて…一人は…独りは寂しいよ。…弘樹っ…」
おっかしいなー…。
俺の幻聴?千明は暗所恐怖症でも閉所恐怖症でもない。
「…寂しいの?」
バンッッ!!
「うぉっ!?」
「…んにゃ…寂しいよ……。」
俺が普段着ているのをずっとパジャマ代わりにしている千明は、ダボダボのスウェットを上だけ着て、俺の胸に飛び込んできた。
俺に比べて小さい手は、腕をまくっても少ししか出てきてこなかった。胸におかれているその手が可愛くて可愛くてしょうがなかった。
「ほら、ちゃんと自分で立って。」
「ん…む……ひろ……眠い…。」
「はいはい…っと…。」
ドライヤーを片手に千明を抱え、俺の部屋へと向かった。スウェットから除く程よく焼けた、白くも黒くもない肌。俺好みだ。
途中でこけそうになりながらも、俺はベッドに千明をポフッと座らせた。
†