ひとつ

□俺の本は
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「ってか名前!教えろよ!」



「俺は桜井滉太(さくらいこうた)
体育委員委員長です☆」


…興味ない。



「じゃ、じゃあ桜井くん、
今日見た事は全部忘れて下さい…。」



「忘れるわけないだろっ♪
今日お前んち行くから、正門で待ってろよ!」


バンっと強引に扉を開け、俺に同人誌を投げ渡した桜井滉太。どうしようか、マジで殴りてぇ…。




あぁ"!!マジでどうしよう!!
俺んち一人暮らしだけどさ、同人誌いっぱいあるよ!しかもダチのエロ本とかもいっぱいある…やべぇ、絶対片付ける時間くれないよな。もう目に見えてるよ…。



俺は顔が燃えるんじゃないかってくらい熱かった。そして同人誌をぎゅっと抱え、俺にフラグ立ってしまった事、激しく後悔した。


屋上なんかに来なければ…!



後悔の気持ちだけが残ったまま、もうすぐ授業開始なので、教室に戻った。
























そしてホームルーム…


担任の長ったらしい話が終わるまで、俺は妄想をしていた。




あー…あいつとあいついいな。
誘い受けオーラがたまらん。


たかし君には悪いけど、俺じゃなかったら腐男子受けも萌える。そう、俺じゃなければ腐男子受けバッチこいなんだよ。たかし君はもともとネコな顔だし、涙目で大好きとか言うの見てたらたまらんだろうな…。





頭の中はパラダイスな俺だが、
ちゃんと現実世界にも意識はある。




「んじゃ桜井、号令。」



「…俺学級委員じゃねぇし。



きりーつ、気をつけー、礼。」





皆の浅い礼が終わった瞬間、俺は駆け出した。




桜井が正門にくるまえに帰らなければ…。そして何が何でも来そうな桜井のために鍵付きの引き出しに同人誌をつめこむ!オッケー!


エロ本はとりあえず友人の、って紙を貼り付けとく!計画性はバッチリだ!







だが現実はそう甘くない。





グイッ


「うわぁっ!?」




誰かに腕を引かれ、俺はそいつの胸にすっぽりと収まった。自分に関してはウブな俺、簡単に顔が赤くなった。


「何逃げようとしてんの?」


「桜井…っ…。
へ、部屋…片付けたくって…。」


案外正直に言えば聞いてくれるかも!



「あー…この本片付けんの?」


カバンをぽんっと叩いた桜井。
恐らく同人誌のこと、バレてる。



「…逃げんなよ。」


「はぅっ…!」

耳元で囁かれ、思わず声をあげてしまった俺。思いっきりクラスメートが固まった。女子の一部からは黄色い悲鳴がきこえた。あの子たちは恐らく腐女子だろう。



「ちが…っ…くはないけど…!
エロ本とかもあんだよ!」



その言葉に、クラスの大半が反応した。



「俺も行きてぇ!!」

「俺も俺も!」

「おい桜井いいだろ!?」



いや、俺の許可をとってくださいよ!



桜井…なんて言うんだろ。
もしこんな大人数に来られたら…





想像しただけで顔が真っ青になった。










「ダメダメ!
俺こいつと二人で遊びたいんだ!
おめーらはまた今度な!エロ本も用意しとけ!」



「っしゃぁ!!
滉太がまた遊んでくれるぞ!!」



「滉太が好きな巨乳のやつ用意しとくぞ!!」


「っせ!女子が引いてんぞ!
滉太も引いてんぞ!」


「いや、引いてねぇよ。俺は…俺は。」



…巨乳。


俺は無意識に自分の胸を見てしまった。今だに桜井が後ろにピッタリとくっついていた。桜井の胸と同じく、俺の胸は無かった。…俺巨乳あんま好きじゃない。美乳がいい。




「んじゃ、行くぞ。」


こちらを向いてニカッと笑う桜井を見たとき、俺はこいつが女からも男からも好かれる理由が分かった。


俺は人気者にもなれないし、
腐男子だからこそ、語り合える仲間も少ない。俺は嘘をつくのが嫌で、腐男子という事を隠してまで友達を増やすのが耐えられなかった。



「…っ…!」



皆に見せつけるように、ゆっくりと指を絡め恋人つなぎにした桜井。



「…何でっ…。」



同人誌では何回か見た恋人つなぎ。いざ自分に回って来たとなると、心臓が破裂しそうだ。緊張しすぎて息がつまり、それに加えて涙も堪え、うまく喋ることが出来ない。



「涼の本でこんな事してたよ?
…こんな事されたいんじゃないの?ホラ、涼も絡めてよ。」

小声で俺に言った桜井。


何で急に名前呼び!?
しかも俺にやって欲しいわけじゃねぇ!!



「俺は見てたいだけでやってほしいわけじゃねぇ…!」


あーだこーだ言いながら正門から俺の家に向かっている途中。ここに来るまでにどれだけ注目されたか…!





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