ひとつ

□構わない
2ページ/18ページ






「お…お、れは…志紀(しき)。」



「志紀…ねぇ…。」


目が泳いでいることから、明らかに偽名だということが分かる。


…死期とでもかけたんだろうか



「ねぇ、死ぬの怖くないの?」


「怖くないよ、死ぬより怖いこと体験してるんだから。この世に縛り付けるものもないし欲しいものもない。無くして悲しいものもない。未練は何もない、だから死ぬ。」




ふーん?


だったらあんたに恐怖って感情を植え込んであげようか…。それと、あんたが死のうとしても僕の魔法で引きとめられる。



「あんた、この学校の生徒?
あ、僕は三年生だよ!」


「奇遇だね、俺も三年生なんだよ。」



…嘘はついてないみたいだね。



「んじゃ、俺もっかい飛び降りてくるから。」



「…じゃ。」


立ち去る背中を見送るフリをし、僕は優しくふぅっと息を吐いた。


飛び出した白い気体は、僕の使い魔で、主に守護の役割を果たしている。

僕はこの使い魔のおかげで、
轢かれそうになったときとかは間一髪で助かっていた。




「…死なせちゃダメだよ?
どんな手をつかっても、例え喧嘩をさせてでも死なせたら、僕怒るからね?」



ニコッと使い魔に笑顔で脅しをかけた僕



すると気体状の使い魔は、志紀とやらの体にまとわりついた。まるで守るかのように。


これで、志紀は死ぬことはない。

ようするに僕に迷惑はかからないということだ。



僕はショッキングピンクのイヤホンを耳にいれ、音楽を流し、ネオンもまだつかない昼間のネオン街に溶け込んだ。








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ