ひとつ
□構わない
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「お…お、れは…志紀(しき)。」
「志紀…ねぇ…。」
目が泳いでいることから、明らかに偽名だということが分かる。
…死期とでもかけたんだろうか
「ねぇ、死ぬの怖くないの?」
「怖くないよ、死ぬより怖いこと体験してるんだから。この世に縛り付けるものもないし欲しいものもない。無くして悲しいものもない。未練は何もない、だから死ぬ。」
ふーん?
だったらあんたに恐怖って感情を植え込んであげようか…。それと、あんたが死のうとしても僕の魔法で引きとめられる。
「あんた、この学校の生徒?
あ、僕は三年生だよ!」
「奇遇だね、俺も三年生なんだよ。」
…嘘はついてないみたいだね。
「んじゃ、俺もっかい飛び降りてくるから。」
「…じゃ。」
立ち去る背中を見送るフリをし、僕は優しくふぅっと息を吐いた。
飛び出した白い気体は、僕の使い魔で、主に守護の役割を果たしている。
僕はこの使い魔のおかげで、
轢かれそうになったときとかは間一髪で助かっていた。
「…死なせちゃダメだよ?
どんな手をつかっても、例え喧嘩をさせてでも死なせたら、僕怒るからね?」
ニコッと使い魔に笑顔で脅しをかけた僕
すると気体状の使い魔は、志紀とやらの体にまとわりついた。まるで守るかのように。
これで、志紀は死ぬことはない。
ようするに僕に迷惑はかからないということだ。
僕はショッキングピンクのイヤホンを耳にいれ、音楽を流し、ネオンもまだつかない昼間のネオン街に溶け込んだ。
†