ひとつ
□俺の本は
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「うっひょー!!
この姉ちゃん巨乳じゃあ!!」
「うぉあ!?俺にも見せろ馬鹿!!」
今日の昼休みも騒がしいこのクラス
俺は端っこでケータイを弄っている。
覗き見防止のシールを貼り、俺が好きな携帯小説、BL短編集を読んでいる。
内心うひょぉぉぉおお!!とかなっているが表には出していないので不審に思われたことはない。
俺は唯一の腐男子仲間、前の席のたかし君に小声で話しかけた。
「オススメの同人誌、持って来たよ。」
「えっ、本当?
でも…僕これから職員室行かなきゃいけないから…放課後にまたお願いね!」
「あ、あぁ……。」
そう言ってたかし君はトタトタと去って行った。
ふぅ…暇だなぁ…。
昼休みはあと30分もある。
俺はその時間を同人誌にまわすべく、屋上へ走り出した。
大抵は屋上でイケメンとバッタリ、というパターンだが、生憎この学校にそんな王道なやつはいない。非常に残念だ。
ギギィ…
軋む扉をゆっくりと開け、
細い隙間からこっそりと辺りを見渡す。
よし、誰も居ない!
読み放題だ!
俺は、日向も当たるし端っこの場所、つまりお気に入りスポットに座った。
制服の中に隠していた同人誌をゴソゴソと取り出し、家に居るような感覚でリラックスしていた。
だから気付かなかったんだ。
後ろからの気配に。
「なーに読んでんのっ?」
「わぶちゃぁっ!?」
俺は慌てて本を閉じた。
フラグ成立!!
腐男子受けは萌えるけど、
それが自分というのは嫌だ。
俺は見て楽しみたいんだ。
それに俺ゲイじゃないし、ノンケだし。
「ねぇ、何隠したの?」
「え……うぅ…。」
「そんなに真っ赤になる程恥ずかしかったの?」
「っ…。」
俺は何も言い返せなかった。
それはそれで怪しいけど、口を滑らせるよりかはマシだ。それよりこのクラスの人気者が早く帰ってくれないかという希望だけを膨らませていた。
ひょいっ
「あぁっ!」
「ん?……男?」
俺の顔が一気に赤く染まった。
腐男子という事が恥だとは思わない。むしろ俺は誇りに思っている。
だけどそれが普通の人にバレたとなったら別だ。偏見を持ってる人だって居るし、そんな人に何を言われるかも分からない。
しかもコイツはクラス…むしろ学校の人気者だ。コイツが呟きでもすれば学校中に広がるだろう。たかし君にも被害が及ぶかもしれない。
「ふーん…?
こういう趣味なんだ…。」
引かれた?てか引いてもらわないと噂立てられそう…。今だって冷めた目のつもりなんだろうけど、意地悪い目で俺を見てる。
「君、何年の何て名前?」
あははははー。
同じクラスなのに名前を覚えられていない!!…俺だって覚えてねぇけどさ。
「二年…五組…。」
「え、同じクラス?名前は?」
本当に教えて良いのか分からないが、とりあえず無視は嫌なので答えた。
「……鈴木涼(すずきりょう)」
「涼……あぁ!あの影薄い!」
傷付いた!
俺傷付いたぁあ!
「そーゆーあんたは?」
「俺?うーん…
知らない人は居ないと思ってたんだけどなぁ…。」
「…喧嘩売ってんの?」
「違うよ、変態君。」
「へんたぁっ…!?う、うるせぇ!!」
「だってこんなえろーい本当読むんでしょ?」
「……あ、や…っ…!」
反論しようとするが、ごもっともすぎて反論出来ない。ちょっと性描写があるくらいなのに…。
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