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□掌の温癒(ぬくもり) 中編
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いくら世話役を任されているとはいえ、画魔も忍の里に在籍している限りは忍務に駆り出されることも少なくなかった。

画魔が忍務に赴いている間、陣は里の風使いに預けられた 。
とある忍務の際、凍矢は本来であれば呪氷使いに預けられるところを、別件の長期忍務で呪氷部隊が出払っていたこともあり、長から直に手ほどきを受けることになった。
里の忍の内では長の稽古は過酷なことで有名である。
まだ基礎稽古も終えていない幼い凍矢が長の指南を受けるということで、里は噂で持ちきりになった。


わざわざ長が稽古を付けるのは、呪氷使いの奥義だけではなく、将来的に里長の座も継承させるつもりなのではないか・・・
凍矢が里に保護された時の状況が、近年稀に見る特殊なものだったことも噂の独り歩きを増長させていた。

実際のところ、長が凍矢の妖気を見計るためという理由もあったのだが。



里の忍が戦場へと駆けつけた時、戦に巻き込まれて焼き討ちにあった筈の集落は無意識のうちに力を開放した凍矢によって全てのものが呪氷に閉ざされていたという。
そこには賊も、集落の民も、何一つ時を刻んでいるものは存在しなかった。
暴走する妖気の中心にいた凍矢自身も自らの氷に覆われ、あと少し呪氷部隊の到着が遅れていたら命を落とすところだったのだ。
精鋭の集う百戦錬磨の呪氷部隊でさえ、解氷するのにかなりの時間を要した。
その力の源がその集落に住んでいた幼い子どもだったという事実は、すぐに長の知るところとなったのである。

 
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