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□愛人24号
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「すきだ」
太一は目を丸くして声の主を見つめた。何を言い出すんだこいつは。冗談だろ? と笑ってやりたいが、どうやら無理そうな雰囲気だ。
いや、俺の事を何だと思っているんだ、幼馴染の友達だろ。兄弟みたいなもんじゃねーか。冗談だろ。
手に持っていたゲームのコントローラーが留守になり、テレビ画面にGAME OVERの文字。
「……は?」
顔赤いですよ、玲さん? 俺たち男同士じゃねぇっすか。
え、まじで?
「わり、やっぱ嘘。無し」
今にも泣き出しそうな顔で玲が言った。太一は益々困り果て、眉間に皺を寄せたまま動けなくなってしまった。
「……そんな見んなよ」
チラリと太一を見たあとで玲がそう言った。厳密に言えば太一はそんなに意識して見ていた訳ではなく、固まって目が離せなくなっただけなのだが。それでも玲は顔を真っ赤にして目を潤ませたまま、俯いてしまった。長めの黒い前髪がさらりと垂れ、その顔を隠す。
「いや、見ん……は?」
太一が戸惑いを隠せずにいると、玲は着ていた紺色のセーターを伸ばして手を中にすっぽりと入れ隠れるように身を縮める。体育座りの状態で蛹のようになってしまった。
「玲……?」
名前を呼ぶとピクリと肩が反応した。そして対戦していたゲームのコントローラーを太一の方へグイと持って行き、体育座りした膝の上に顔を埋める。
そして玲は小さく呟いた。
「すきなんだ……ごめん」
膝の中で篭った声がやけに大きく響く。黒く柔かそうな髪の間から覗く耳は赤くなり、玲の肩は震えていた。
「な……なんで謝るんだよ」
「……気持ち悪いだろ」
泣き出しそうな、いやもぅすでに泣いているような引きつった声だった。紺色のセーターごと膝を抱え直すと、顔を膝にグリグリと押さえつけていた。
「……そんなことねぇよ」