中学時代猿美→吠舞羅加入ちょっと前猿美

美咲が離れていってしまうことを焦る猿比古
最後のほうは十束さんと猿比古だけ


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「猿比古っ!!」

後ろから名前を呼ばれ、振り向く

そこにはクラスメートの八田美咲がいた


「ああ、美咲か...何?」

「名前で呼ぶなっつってんだろ!!なぁ、ゲーセン行こうぜ!!ゲーセン!!」

またゲーセンか、よくもまぁ飽きないよな

「嫌だよ、俺本屋行きたいんだけど」

「本なんか読んでるから目ぇ悪くなるんだろ!!本よりゲームだぜ!!」

ゲームのやりすぎの方が目悪くなると思うけどな
と思ったが、それを口に出してギャアギャアと騒がれるのも面倒なので黙っておくことにした


「...明日は行かないからな」

「よっしゃ!!さすが猿!!」

常に声はデカいし、チビのくせに態度はデカいし、頭悪いし、いつも振り回してくる

なんでこんな、俺と性格が真逆な奴と仲良くしてるのか正直俺にもわからないが
美咲と一緒にいる日々は居心地の良いものだった




この時は、まだ




……
………
…………


「猿、吠舞羅行こうぜっ」

「...嫌だ」

「なんでだよー?」

「あそこは騒がしくて好きじゃない」


美咲は何に魅せられたのか
炎を身体から出すことができるトンデモ集団、吠舞羅の集まる場所「バー吠舞羅」に居座るようになった

もちろん俺も連れ出されることが多々あったが
俺は正直言うと、あの集団が嫌いだ

騒がしくて、バカばっかりで、生産性の無いことにばかり体力を費やして
ていうかあいつら働いてんのかよ...


「お前が行かないなら俺だけでも行ってくるからな!!」

「...チッ、わかったよ...」

ああ面倒くさい




〜〜〜〜


俺が吠舞羅を嫌いな理由は、騒がしいから だけではない


「尊さん尊さん!!」

「ぁあ?」

「八田はほんとにキングが好きだね〜」

「よかったやん尊、こんなにしっぽ振って、犬みたいでかわええやろ」

「草薙さん!!だっ、誰が犬ですか!!」


吠舞羅の連中に囲まれている美咲
それだけでも気にくわないのに、美咲の奴は
吠舞羅のトップだとかいう、尊さんって奴の側にピッタリくっついて楽しそうに話している


それが何よりも気にくわない


「美咲、俺、帰る」

募るイライラに耐えられなくなり、席を立ち上がる

「なんだよ猿、お前も話に交わろうぜ」

「いい」


座りっぱなしだったからだろうか
突然に立ち上がったせいで視界がゆらりと大きく歪み
そのままブラックアウトした

「猿比古っっ!?」


完全に意識が途切れる瞬間、美咲の声が聞こえた





………
……




「...っ!?」


気がつくと、殺風景な部屋

視界にはくすんだ色の壁と、ボロボロのソファと


「十束、さん...?」

「あっ、伏見起きた?頭とか痛くない?」


俺の横で座っていた、吠舞羅最弱の幹部、十束さん

身体を起こそうとすると、頭に鈍い痛みがあった

再び身体を横にし、そこでやっと自分がベッドに横たわっていることに気がつく


「ここは...」

「ここはね、キングの部屋だよ」

キング、つまり尊さん
また尊さんか、そう思い再びイライラとし始めた

そのイライラですら頭痛が起きる


「伏見いきなり倒れたんだよ、ここまで鎌本が運んできてくれたから、後でお礼言っときなね?」

にこり、と笑いながら言う十束さん
俺はこの人が嫌いだ


「伏見、八田がキングに取られちゃうって焦ってるでしょ」

「...は?」

「見てればわかるよ」


俺が美咲を?尊さんに取られるって焦ってるって?



「んな訳ないじゃないですか、美咲なんかああやって尻尾振ってるのがお似合いですよ」

「悔しいよね、仲良かった相棒をいきなり奪われるんだもんね」

「だから違いますって」

まるで俺の話を聞かずに、持論を述べるように話す十束さんにイライラが収まらない

頭が痛い


「キングは伏見の事、嫌いじゃないよ」

「俺は嫌いです」

「八田も伏見の事、嫌いじゃないよ」

「......」


そんなのわかってる
尊さんにしろ美咲にしろ、俺の事が嫌いだったら俺の事をこうして受け入れてくれないだろう


「...俺も嫌いじゃないですよ」

ただ、どうしたらいいのかがわからないだけ
俺から離れる美咲をどうしたら繋ぎとめられるのか
どうしたら尊さんより俺を見てくれるのか

そればかりを考えてしまうだけ


「もちろん俺も伏見を嫌いじゃないよ」

「...わかってますよ......」


そこまで言って、十束さんはベッドから立ち上がった

「さぁ、もう大丈夫?下に降りようか、伏見の大好きなキングや八田が待ってるよ」
「...別に大好きではないですよ」


十束さんに聞こえるようにわざと大きめに舌打ちをして、俺もベッドから立ち上がる

いつの間にか、頭痛もイライラも収まっていた




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イライラピリピリしてても十束さんに丸く収められちゃう伏見くんがすきです

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