Towards light

□出航
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空を切る音と、息を吐く音が耳に響く。

ルフィ達が行ってからそんなに時間は経っていないはずなのに、彼等の姿は見当たらない。

それにしてもレイリーさんは少し強引だ。

「そのまま真っ直ぐ行けば、じき着くだろう。」なんて曖昧な説明で私を追いやって…


42番GRって、どこ?













その頃、ルフィ達は無事にサウザンドサニー号へ着き、サンジは大量の鼻血を噴射していた。















『着いた!』



42番GRの入江まで来ると、海軍の軍艦と、その前に九蛇海賊団の船が停泊していた。

誰かが海に飛び込んだのが見えた。



出航準備だ…

どうしよう?行くべき、行かないべき?

いきなり現れたらビックリされるよね…



こころは小さく「よし、」と言うと、すぅっと大きく息を吸い込んだ。



『ルフィー!!!!!』



精一杯の声で叫ぶ。



忙しなくキョロキョロしていたルフィの動きがピタリと止まった。

目が合うと、ルフィはこころに向かって大きく手を振りだした。



ル「早くしろ!!出航するぞー!!!」



その言葉にこころは嬉しくなって、シャボンディ諸島の地面を蹴ろうとした。

だが、後ろから軍艦が三隻、こちらへ向かってくる事に気付いた。

打ちこまれた大砲に触ってテレポートさせたのはタッチの差でこころの方が速かったが、同じ事を考えていた誰かにぶつかってしまった。

体制が崩れると思ったが、お腹にぐるぐるとルフィの腕が巻き付き、勢い良く後ろに引っ張られた。

お尻に鈍い痛みが走り、瞑っていた目を開けると、私が座っている隣でルフィが起立したまま、何かを叫んだ。



ル「野郎共!!ずっと話したかった事が山ほどあるけど、兎に角だ、2年間も俺のわがままに付き合ってくれてありがとう!」

サ「今に始まったわがままか?」

ウ「全くだ!お前はそのままずーっとそうなんだよ!」

ル「いっしししし!」



こころは目を瞬かせながら、ルフィを見上げる。



ル「帆を張れー!出航だー!!!」

「「「「「「「おおー!!!!!!」」」」」」」

ル「行くぞ魚人島ー!!!」



ルフィから視線を外し、一味の顔を見渡す。

すると、片目を瞑った剣士さんと目があった。

「誰だお前?」という顔をしている。



ゾ「で、ルフィ、出航しちまったが…、誰だそれ?」

ウ「お、その帽子見たことあるぞ!確かルフィの兄ちゃんの…」

ロ「!?」



突然、こころの視界が開けた。

気が付けば帽子が後ろにそれている。ニコ・ロビンの仕業だろう。



ロ「やっぱり…、あなた栗色人形ね?」



こころが頷きかけたとき、鼻血を噴射する音が聞こえた。



サ「か、かかか、可愛い!!天使だ、天使が見える…!!」

チョ「サンジー!!」



もうサンジはギャグの存在でしかない。



ナ「ロビン、なんでこの子が栗色人形って分かるの?だって確か手配書に写真は…」

ロ「ええ、唯一写真が載っていない人物。でも噂されている風貌と一致するわ。」

ル「あぁ!こいつがそのなんとか人形だぞ。俺も最初人形かと思った!」



そう言ってルフィは「いしし」と笑う。

しかしナミは天候棒(クリマ・タクト)を組み上げ、ロビンも戦闘態勢に入った。



フ「ん?どうした?敵なのか?」

ナ「新聞読んでないの?」

ロ「彼女、海賊狩りよ。」



「「「「「え?!」」」」」



ほら、やっぱりこういう反応されるんだから。

分かりきってた事じゃない。この世界は今の私にとって敵ばかり。

今更…



ル「おい!こころは今日から俺達の仲間だ!!ナミ、ロビン、勝手に敵視すんな!」



ルフィが血相を変えて2人を制する。



ゾ「こころ?…さっきルフィが言ってたのはそいつの事だったのか。」

ナ「仲間って!だって海賊狩りで…」



『海賊狩りをしていたのは、私なりの白ひげさんへのせめてもの名誉を守る行いで。
そしてルフィは、麦わらの一味の船長さんは、私の命の恩人です。』



こころは一味に向かって深く頭を下げる。



ル「おいやめろよ。俺もこころには助けられてばかりだったんだ、そういうのはナシだ!」

『でも…』



2人のやり取りを見て麦わらの一味は、ルフィとこころの間の絆を垣間見た気がした。



ウ「し、白ひげ海賊団だったのか?!…あ、でもそうだよな、ルフィの兄ちゃんは…」

ナ「だからルフィのお兄さんの帽子を…?」



2人は少し混乱しているようだ。

いったいこの人達はどこまでの噂を知っていて、それを信じているのだろう?




ル「エースはこころの兄ちゃんだ!!」



ふんっと鼻を鳴らしながらルフィが言った。

それを聞いて、こころは小さく首を横に振る。



「「「「「「「ええ?」」」」」」」



なんで知られていないことをルフィは喋っちゃうのかしら…



サ「ど、どういうことだそれ?ルフィは何でこころちゅわんと仲が良いんだ?!なんで俺ばっかり…あんな目に…」

ブ「サンジさん…」

『エースとは盃を交わした義兄妹です。ルフィとは2年前の頂上戦争で戦いを共にしました。』

ロ「なるほど、そういうことね。」



こころが簡潔に応えると、ロビンの中で何かが繋がったらしい。

「2年前の戦争」と聞いて、麦わらの一味も思い当たる節があったみたいだ。



ナ「お兄さんを亡くしたのは、こころも同じなのね…」



麦わらの一味の移り変わる感情を目にしているようで、こころはまたパチパチと瞬きをした。

自然と名前で呼ばれている。

レイリーさんの言った言葉は、もしかしたら正しかったのかもしれない。



ル「だからこころは今日から仲間だ!!文句がある奴は船を降りろ!」

『え?!そこまで言うの?』

ル「いいんだ、誰も降りねぇから。」



笑いながら言うルフィに、こころもまた微笑んだ。

仲間との信頼はとても厚いんだ、そう言葉が物語っているようだった。



ロ「一つ、いいかしら…」

『はい。』

ロ「なぜ、白ひげ海賊団の仲間ではなく、この船なのかしら?貴女には他にも道はあったはずよ。」

『それは…エースと約束していたからです。…エースに、その、もしものことがあった時は、代わりにルフィの夢の果てを見届けてくれ、と。
だから、私にとってエースへの恩返しは、これくらいしか、約束を守ることくらいしか、出来なくて…』



こころの声が震え始める。



『守れなかったから、……でも、皆さんに迷惑がかかるなら…』

ル「かからねぇ!!」

『…ルフィ…』



こころが大きく目を見開く。



ロ「…そう。悲しいことを思い出させてごめんなさいね。」



優しいロビンの言葉に今度はぶんぶんと首を横に振った。



フ「な、泣かせるじゃねぇか!なんつー出来た兄妹愛だ!」



フランキーがボロボロと涙を流す隣で、チョッパーも鼻をすすっている。



ウ「あぁ、そう言えば俺達もアラバスタでルフィの兄ちゃんに、「よろしく頼む」って言われたな。」

ナ「あったわね!ルフィと違って常識ある人だったわ。」

チョ「俺、あん時も泣いたんだ…」

『え?』



そっか…アラバスタの時にルフィだけじゃなくて、その仲間にも…



ゾ「ん?…そん時おめぇは見てねぇぞ?」

『あ!私は、熱を出して、倒れていました…』

ル「えー!じゃぁこころが元気だったら会ってたってことか!」

『そうだね。』



遠慮がちに笑うこころを見て、ずっと話に入ってこなかったサンジが、くるくると回りながらこころの前に来て片膝を着いた。



サ「あなたのコック、サンジです。どうぞよろしく。」

『よろしく、お願いします…』

ウ「お、サンジ復活か?!…まぁあれだ、俺は大丈夫だから心配するな!」

ル「何言ってんだ?ウソップ。」

ナ「よろしくこころ!それと敬語はなしよ!」

ゾ「・・・・・」

フ「おう、俺の最新兵器見るか?!」

ロ「ふふふ、誰も見たがらないわよフランキー。」

ブ「ルフィさんはこころさんの事をとっても信頼してるみたいですねぇ。」

チョ「俺チョッパーって言うんだ!医者だ!よろしくな!」



そう言ったチョッパーをこころはじーっと見つめる。



『…可愛い。』

チョ「か、可愛くなんてねーよ、このやろー!」


そう言う言葉とは裏腹に、たいそう嬉しそうに顔がほころんでいる。





もう既に海の底を進んでいるサウザンドサニー号で、ウソップが叫んだ。



ウ「海軍に目ぇ付けられたって怖くねーぞ!このウソップ様がいるからな!!」

ル「おう、期待してるぞウソップ。」

ウ「ま、ままままかせとけ!」







麦わらの一味って、なんか不思議…。

ルフィはしっかり船長していて、仲間もそれを信頼してる。

海賊団として上出来ね。



…あれ?

なんでだろう?急に瞼が重くなってきた…

眠ったらいつ襲われるか分からないのに…

あぁ今は大丈夫なのか…大丈夫…
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