Towards light
□再会
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「…ここに来るのは何年ぶりかしら?」
『うーん?…3年ぶりくらい?』
「もうそんなになるのか。…元気そうで、なによりだ。」
『うん。…レイリーさんも、シャッキーさんも。…私ちょっと出てきます。』
「ルフィくんか。」
「気を付けてね。」
『ありがとう!』
こころは扉を開け、BARを出て歩きだす。
ここはシャボンディ諸島。
頂上戦争から、あれから2年が経っていた。
ルフィが、レイリーさんとジンベエを引き連れて「オックス・ベル」を16点鐘したことは、新聞で読んだ。
あの写真に隠された意味も分かった。
・・・分かってしまったのだから、しょうがない。
おかげで探す手間が省けて有難かったわ。あとはここでルフィを見つけるだけ…。
『ルフィが私のこと、見つけてくれたら楽なのに。』
そう言って両手を空に突き上げて背伸びをした時、銃声が聞こえた。
え?
『何…?』
…
銃声が聞こえた方へ飛んで行くと、女の人が腕から血を流している光景が目に飛び込んできた。
「おい大丈夫か?!おい!」
「なんて奴だ!いきなり撃ちやがった!」
「酷い!」
「おい、しっかりしろ!なんてことしやがる!俺たちがいったい何したってたんだよ?!」
偽ル「謝っただろう?間違ったんだよう、すまねぇな。ちょうどお前等の様な二人組を探してんだ。髪と鼻の長ぇ男女をな。」
『罪もない人に銃を向けて、謝れば済むと思ってるの?あなた。』
「ああ゛?誰だお前。俺は麦わらのルフィだぞ?」
『・・・・・。下手な嘘はつくもんじゃないわ。』
こころが顔をあげると、ルフィと名乗った男の顔が一変した。
偽ル「お、お前は… ?!」
その時、後ろを通った通行人の大きなリュックサックがぶつかり、偽ルフィは後ろに大きく尻餅をついた。
「あぁ、ぶつかったか?ごめんな。…じゃぁな!」
振り返りもせずに、その人は前へと進んで行く。
偽ル「ちょっと待てぇ!!!」
偽ルフィはそう叫ぶと、拳銃を持って立ち上がり、通行人に向かって歩いて行く。
偽ル「お前、わざとぶつかったよなぁ?なんか言ったらどうなんだ?俺を誰かと知っての狼藉かって聞いてんだ。
見たか?さっきの俺の間抜けな姿。大衆の面前で恥かかされた。懸賞金4億、エリート海賊、この俺がだよ、おい!今すぐ土下座し、怯え、そして俺に命をこえ!!」
『・・・』
数々の暴言を吐かれて足を止めていた通行人が、再び歩き出した。
偽ル「よぉく、分かった!」
怒りが頂点に達した偽ルフィが拳銃の引き金を引く、と、同時に金属矢が刺さり銃が暴発した。
通行人の目が大きく見開く。
「これは…」
それだけではない、自らルフィと名乗った男とその取り巻きが意識を失って倒れたのだ。
こころの目が大きく見開く。
『覇王色の、覇気?』
こころは戦闘態勢のまま、「ただ者じゃないわね」と小さく呟いたが、こちらに振り返った通行人を見て、絶句した。
『・・・ルフィ。』
こころはポカーンとしたまま、その名を口にしたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
そして百面相でもしているかのように、今度は泣きだしそうな顔になる。
ル「こころ!久しぶりだなぁ!!」
ルフィはにっと笑う。
『…良かった、本当に良かった。ルフィ、元気そうね。』
ル「あぁ、元気だぞ?」
「なんでそんな顔してんだ?」と言わんばかりの不思議そうな顔で、ルフィは首を傾げている。
それから、「俺急いでるんだ」と言って、歩き出した。
こころも慌ててルフィと並んで歩きだす。
『ルフィとは、その、戦争の中で別れたのが、最後だったから…』
言い難そうに、俯いたまま口を開く。
ル「…。こころは平気なのか?」
『え?わ、私?!』
勢いよく顔をあげる。
ル「それエースの帽子だろ?…お前の仲間達といなくていいのか?」
『・・・・・』
こころは視線をさまよわせてから、寂しそうに俯いた。
『約束を…』
ル「約束?」
『ううん、なんでもない。白ひげ海賊団とは、別れてきた。・・・ルフィに、会いに来たの。』
ル「・・・・・」
沈黙してしまったルフィの隣で、こころは顔をあげるが、深く顔を隠すようにフードを被っているルフィがどんな顔をしているのか、見ることが出来なかった。
「まずいこと言ったかな?」と不安になったこころだが、
ル「ししし、そうか!!なら仲間になれよ!」
笑ったまま言ったルフィの言葉に、今度は驚きを隠せない。
『…?!……そんな簡単に言っちゃダメでしょう?!』
ル「そうか?…なんかよ、初めて会った気がしねぇんだ。」
『それは、2年前に会ってるからよ…』
こころの言葉に、ルフィは少し考えてから続ける。
ル「そうじゃねぇよ。ずっと旅してきた気がするんだ。…ん゛ー、うまく言えねぇけど…。こころのこと信用してんだ。」
驚いた顔のままだったが、こころは「変なの」と言って笑った。
ル「…それに行くところ、ねぇんだろ?」
『……』
ルフィに確信を突かれて、こころは黙る。
『そう、そのことで…』
何か言いかけたこころの言葉を遮り、ルフィは再び「仲間になんねぇか?」と持ちかけた。
『ありがとう。でも仲間って言うのは、保留で…』
ル「え゛ー!なんねぇのか…」
『あ、でも、船に乗せてほしいんだけど…』
その瞬間、唇を尖らせていたルフィの顔が、なぜかパッと輝いた。
ル「おう!こころならいつでも歓迎するぞ!」
『良かった!ありがとう。改めてよろしくね。』
ルフィに手を差し出して、握手を交わす。
『ねぇ、なんで顔隠してるの?』
ル「ん?あぁ、騒ぎを起こしちゃいけねぇんだ。」
『え?そうなの…?私と一緒だと、まずいよね・・・』
ル「なんでだ?」
『…少し、目立ちすぎた、というか、その、…後ろからついて行くね。』
「変なやつ」と言いながら、ハテナマークを頭上に浮かべたまま、ルフィは前を向く。
こころは歩く速度を緩めて、2mほど後ろからついて行く。
新聞、読んでないのかな?