Towards light
□残されたもの
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―約2年前―
『この人じゃないって!あの海賊が暴れたの!』
「あいつが暴れた事が事実であろうとなかろうと、こいつも海賊だ!」
エースの前に両手を広げて立ちはだかるこころは、キッと海兵を睨み付ける。
『お兄さんは助けてくれたって言ってるでしょ!』
「そこをどけ!」
『どかない!』
「くッ―・・・栗色人形、海軍側にいると思ったが…。海軍を敵に回すぞ。」
『構わない。・・・行こ、お兄さん。』
くるっとエースの方に向き直ると、こころはエースの腕を引っ張って走り出した。
エ「おい、良かったのか?」
『いいの!お兄さんが捕まっているのを黙って見ている方が嫌だもん!』
そう言うとこころはにっと笑った。
『あ、そうだ!お兄さん名前は?』
エ「あ、あぁ、…エース。ポートガス・D・エースだ。」
『へー!私はね、こころって言うの!リリー・D・こころ!』
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エ「はぁ?俺と旅するだぁ?!」
『そう!……だめ?』
エ「俺は海賊だぞ。」
『知ってるよ!良いでしょ?…お兄さん助けたことで行くところなくなっちゃったし…海軍にも目を付けられそうだし…
それに名前にDが付く人と初めて会ったわ!すごいね。』
エ「・・・こころ、両親は?」
『いないよ。』
へへっと小さく笑うと、こころは俯いてしまった。
エースは黙って何かを考えてから、口を開く。
エ「・・・俺と一緒だな。」
その瞬間、こころの顔が勢いよく上がる。
その目は大きく見開かれていた。
『お兄さんもいないの?じゃぁ一緒だね!・・・観念しなさい!』
人差し指がエースに向けられる。
こころは勝ち誇ったような顔をしていたが、エースはその反応が分かっていたように口元を緩め、
その後、盛大にため息をついた。
『ちょっと、そんなにため息つかなくてもいいでしょ!嫌そうな顔ね!』
エ「ガキのおもりかーーーーー。」
『私、これでも15歳よ!』
エ「十分ガキだ!!」
『ガキじゃないもん!私がお兄さんを守るんだから!』
エ「へいへい、」
右手を力なくひらひらさせるエースを見て、こころは頬を膨らませた。
『やる気が足りん!』
長い沈黙の後、どちらからともなく吹き出し、2人して笑いだした。
しかしエースはまた真顔に戻ると、「こころ、一つ違うぞ。こころが俺を守るんじゃねぇ、自分を守るんだ。それでも足りない時は、俺がこころを守ってやる。」と言った。
「そうなの?」と言いながら、頭にハテナマークを浮かべたままのこころを見て、エースは微笑んだ。