Towards light
□過去と目先のこと
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-シャボンディ諸島-
センゴクの言葉に、静まり返っていた。
「・・・・・」
「一体どうなっているんだ!!」
「しかし、センゴク元帥も憶測だと…」
「本当ならとんでもない事だ!まだ…」
「でも、一番驚いているのは栗色ちゃんだわ!」
「どちらを信じたらいいんだ!!」
「あの子に、罪はあるのか?」
―――助けられた人が大勢いるんだ、あの子には…
…
セ「・・・・・お前は、」
こころはセンゴクを見上げたまま動かない。
ガ「今話す必要がっ!!」
セ「ガープ!…もういいだろう。・・・・・・リリー・D・こころ、あくまでこれは憶測だ。忘れるな。お前もまた、ゴールドの血筋だ。」
「「「「「「「・・・・・?!」」」」」」」」」
ル「え?!お前の父ちゃんゴールド・ロジャーなのか?」
元の大きさに戻ったルフィがこころの方をみると、大きな目を更に大きく見開き、口も薄く開いている。
『・・・え?』
セ「お前の父親はゴールド・ロジャーの実の弟。しかし結婚し苗字も全て捨て商人として働いていた。足取りをつかむのに1年はかかった。
ネリネ島に逃亡した母親は名を変え暮らしていたみたいだ。夫婦そろって手こずった。足取りをつかんだ時にはもうこの世を去っていたのだ。
全ての痕跡を綺麗に消し去ってな…。リリー・D、母親の性ではないのか?」
センゴクの言葉に、こころはごくりと喉を鳴らし、ゆっくりと口を開く。
『…そんな話…聞いた事もないわ。残念ながらその名は育ての親がくれたの。私は知らない…』
セ「そうか。それなら良い。」
なぜかあっさりとセンゴクはその話を打ち切った。
憶測だからだろうか?
しかし、こころは母親の名前を知っている。
育ての親が言っていた。
「こころ、あなたの母はリリー・D・アリアと言うのよ。私の親友でね…。あなたを産んで間もなく、疲れが溜まっていたのか、亡くなったけど…。」
物心がついた私に、そう声を震わせながら教えてくれた。父の事に関しては、何も言っていなかったけれど。
『それが本当なら、私とエースは従兄妹ね!』
さっきとは打って変わって、こころは嬉しそうに言った。
エ「こころ、お前ってやつぁ…なんで笑ってんだ!!」
目線を下に向けていたこころの頭上に声が降ってきて、再び上を見上げて口を開く。
『本当だったら嬉しいからに決まってるでしょ!』
ええ、嬉しいわ。
そうよ。
本当だもの。
でもね、笑っていなきゃ、センゴクに見透かされる。
笑っていなきゃ、この震えをどうしろと!
エ「お前も!!命の危険を…!俺は、自分を大切にしろと言ったはずだ!!」
『私が最初にエースを守るって断言したの忘れたの?!』
頑として譲らないこころ。
エ「ッ―・・・」
エースは両手を強く握りしめて、頭を垂れた。
そんなエースの姿を見て、こころもすっと力を抜く。
もし、私がエースと同じように、ゴールド・ロージャーの血筋だって知ったらどうなる?
「血筋」ってだけで追われるのかな。
周りから、白い目で見られるよね。
普通に接してくれる人も、笑顔を向けてくれた人達も…。
今までの生活が、全て、壊れる。
そりゃそうよね。
関係ないもの。
そのレッテルさえあれば、善人とか悪人とか。
どういう人間なのか、とか。
ねぇ、私、やっぱり生まれてきちゃいけなかったのかな?
生きていることが、罪なの?
罪に、値するの?
エースも、こんな気持ちだった…?
知らない方が、
良かったかな…。
ル「…?良く分かんねぇけどお前すげーなー!」
能天気なルフィの声が耳に届く。
こころはビックリして顔をあげる。
あぁ、私が弱気になってどうするの。
今はエースを救うことが、目先のことが大事でしょ。
私はまだ、エースと旅がしたいの。
こころは深く息を吸うと、ルフィに笑いかけた。
『…すごいでしょ?』
それをきっかけにして、いつの間にか一緒に脱獄してきたカマーランドの人達が、
「お譲の強さはそこから来てたのか!」などと盛り上がり始めた。
そして誰かが口を開く。
「俺達ちょっと目立ち過ぎちまったらしいぞ。」
周りを見渡せば、海兵に取り囲まれたいた。
…
白「こりゃぁ初耳だなぁ。」
マ「あぁオヤジ、俺もだ。あいつら何も喋んねぇから知らなかったよい。」
…
ガ「なぜ話した!混乱を招くだけじゃろうが!それともこうなることを予想しておったのか?」
セ「証拠は何一つ無い。こころが頷けば即処刑だ。だが嘘でも本当でも頷かない。頷いたらどうなるか知っているからだ。
リリー・D・こころ、やつが本気になれば世界をも滅ぼすぞ。…それだけは避けたい。」
ガ「こころは庶民にも信頼がある事も知っててか…」
ガープの言葉に、センゴクは一瞥しただけで前を向いた。
セ「作戦に狂いはない。」