wander a glow
□悲劇、再び
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ベッドに腰掛け、足をぶらぶらさせて部屋を見渡す。
右手を開いたり握ったりして感覚を確かめる。私は正常だ。
でも、そばにエルヴィンもリヴァイもいない。
その代わり、強面のキース教官に今日は対人格闘術の訓練だと聞かされた。
部屋のドアを開けて表へ出ると、たくさんの声が聞こえてきた。
辺りを見渡しながら歩いて行くと、金髪の女の子に足を引っ掛けられて、男の子が地面に倒れる光景が目に飛び込んだ。
ついでに何か男の子に話してから、女の子は木材でできたナイフを放り出すと、去って行った。
『大丈夫?』
倒れた男の子に右手を差し出す。
「あ…ありがとうございます、教官」
『…?いえ、どういたしまして』
教官って…誰かと勘違いしているのかな…
でも、どうして?
「矛盾が…」
『?』
「巨人から離れる為に、巨人殺しの能力を、高めて…やがる…」
男の子は私の手を借りて立ち上がると、そう呟いた。
何があったんだろう?
そう思い、再度声をかける。
『大丈夫?』
「え?あ、はい」
男の子は慌てたように、強張った表情を元に戻した。
この子は私を知っているみたいだ。
でも、私は…
『ねぇ、君、名前なんだっけ?』
この子を知らない。
…
第104期訓練兵団の解散式が無事終了した。
夜が明けて、街の一角には人だかりが出来ていた。
見るとエルヴィンもリヴァイも、ハンジもいて、馬に乗って真っ直ぐ前を見据えている。
なのに私は、地面に立って彼等を眺めているだけ。
何、やってるんだろう?
調査兵団の団服を着ているけど、もしかして…クビにでもなったかな…。
そう思った途端、急に胸が苦しくなって背を向けた。
背後で私を呼ぶ声が幾つも聞こえたような気がしたが、応える気にはなれなかった。
なんかちょっと、寂しいな。