wander a glow

□犠牲者のその理由
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『はぁー…』



木材の手すりにだらっと体重をかける。



今日は立体機動装置のサポートをしていたけど、果たして役に立っていたのか疑問でならない。

そもそもあれは直感だ。

腕があるように、足があるように、立体機動装置がそこにある。

イメージを伝えることが私に出来る精一杯のこと。

あとはその人の才能次第。



『はぁ…』



再びため息をついた時、リヴァイにもらったペンダントのことを思い出した。

胸ポケットからチェーン部分を握って取り出し、石を垂らして月明かりに晒すと、澄んだ青色は更に透明度を増してキラキラと輝いた。


まさかリヴァイが私に何かをくれる日が来るなんて思ってもみなかった…


初めて会った時は嫌そうな顔をしていたのに…
























――845年。

巨人の襲撃を受けて、その絶望を目にした後。



憔悴しているはずなのに、なぜか作り笑いをしているこころを目の前にして、エルヴィンが口を開いた。



「一人で戦わせて悪かった」



思ってもみなかったその言葉にこころは大きく目を見開き、それから何度も頭を横に振った。

そして、



『いっいいの、それは全然、もう全然…。エルヴィンのせいじゃないし!あんなの、怖くなかったから…少しも…』



言葉に詰り表情が固まったかと思うと、不意に作り笑いが崩れて、こころの両目からボロッと大粒の涙が溢れ出た。



『怖くない、はずなのに、どうして?足が震えてた!上手く飛べなかった…10体しか、討伐出来なかった!!』

「「「…え?」」」

『本当に、食べてた!なんなの?!これじゃまるで…ぅっ…違う、一緒だ、ううん違う、生きたままなんて…!!』

「…おい、」

『小さい女の子のお母さんが、どこかのお父さんが、目の前で!どうかこの子をって…差し出して、優しく微笑んで!!』

「おい、」

『私は往復してるのに忙しくて、その子の親までは、助けて、あげられなくて!親がいない子の気持ちは、私が一番良く、分かってるはずなのに、それなのに!!』

「こころ!!やめろ!!!」



リヴァイの言葉にこころはハッと息を呑むが、涙は流れたままだ。



『ご、ごめんなさい…』



ずずっと鼻をすする。

リヴァイにハンカチを差し出されて、素直にそれを受け取った。



「こころ、10体討伐したんだな?」

『た、たぶん…』

「リヴァイ、異論はあるか?」

「……いや、」



エルヴィンは満足そうに頷く。



「今日から、こころはリヴァイの下についてもらう」




その言葉にこころはポカンとし、リヴァイはさも嫌そうな顔をした。












部屋の隅っこでこころは両足を抱えて縮こまっていた。

かれこれ数時間ほど、ずっとその体制のままだ。



「おい、おまえの布団はそこだぞ」



そう言ってリヴァイは床に敷かれた布団を指さす。

こころは顔を埋めたまま、消え入りそうな声で応えた。



『寝ないから、…眠れそうにないから。気にしないでください』

「あの光景を初めて見れば誰だって足がすくむ。こころよりずっと年上の大人でもな」

『・・・・・』

「おまえ何を見た?」

『巨人を、見ました』

「そうじゃない。エルヴィンに連れて来られる前だ」

『・・・・・』

「・・・・・」

『答えなくちゃ、ダメですか?』

「無理にとは言わ…」



急にこころの体が傾いてコテンと床に倒れた。

リヴァイが慌てて駆け寄ると、スースーと寝息が聞こえてきた。



「所詮子供だな…」



ため息交じりにそう呟く。

寝てしまったこころを布団に移そうと持ち上げた時、リヴァイはその軽さに驚いた。



「(ちゃんと飯食ってるのか?)」
 
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