middle of a dream

□大蝦夷農業高等学校
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朝っぱらから馬鹿がいた。


ここ、大蝦夷農業高校、通称エゾノーには、農業科学科・酪農科学科・食品科学科・農業土木工学科・森林工学科と何でも揃っている。

私達が選んだ酪農家は、特に実習が多いらしく、家畜の世話も行う。

その為に牛舎へ1-D組でぞろぞろとまわっていた時、牛の仔(こっこ)を追いかけて農地の方まで行った馬鹿がいた。

その馬鹿は、迎えに行ったアキ(御影アキ)に連れられて帰って来た。






「酪農家の諸君!入学おめでとう!担任の桜木だ。受け持ちは国語。これから3年間よろしくな!
みんなはもう3日前から寮生活に入っているから、お互い顔合わせしてると思うけど…あらためて自己紹介してもらおうかな。」



先生の言葉を受け流しながら、机に肩肘をつき、手に顎を乗せて窓の外をボーっと眺める。

ついでに順番に自己紹介をし始めた同級生の言葉も受け流す。

窓際、最高。



桜「次…八軒!・・・八軒!」

「あ…ハイ。」



二度名前を呼ばれ、申し訳なさそうに立ち上がったのは、

"今朝の馬鹿"。




「新札幌中から来ました…八軒勇吾…。えーっと…よろしくお願いします…」



それだけ言うと、ストンと着席をした。

私の席からは後ろ姿しか見えない。




桜「次、神原!」



名前を呼ばれ、立ち上がる。



『清水第一中出身、神原こころです。よろしくお願いします。』



イスを引いて座ると、"今朝の馬鹿"と目が合う。

少し驚いた顔を向け、やがて前に向き直った。




夢とか目標なんてものは、決まる時は一瞬で決まる。

なくたって恥ずかしいことじゃないし、あったって叶えられない人の方が多い、きっと。



まぁ、"馬鹿"とはたぶんクラスの一員にすぎない。


そう思う。
 
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