四十八歳で掘られました
□厄年過ぎたのに、厄が来る
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【克樹side】
しとしと降る雨の中、一人の男が地面に座り込んでいた。
普段の自分なら通り過ぎ、手を差し伸べたりはしない。しないのだが、何故かあの日は男に差し伸べていたんだ。
男は顔を上げ、怪訝そうな表情を浮かべた。
艶やかな黒髪に垂れ目がちな瞳。
顔は想像していた年齢より若く見えた。
『何時までも濡れていては、肺炎を起こしますよ…』
俺の口からは有り得ない科白が出たのも、その瞬間が初めて。
他人に極力関わらない様、過ごしてきた自分が他人に関わってしまうとは…
彼の名は…
確か。
『…俺の名は“深季”。龍華 深季って言う』
――…龍華 深季。
はっきりとした口調で名を語ってくれたっけ。
もう逢わないと思っている所なんか、可愛いよな。