人外二つの物語。

□二つと桜。
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桜の下には死体が埋まっているという。

「桜がそろそろ散り際だな」
俺は残花にそう話しかけると、残花は「ああ」とだけ答えた。
「なぁ、残花。俺に何か隠し事していないか?」
そう言うと、残花はふと目をそらして「何も」とだけ答えた。
残花は絶対俺に何かを隠している。
それは毎年この時期になるとそわそわしだすのだと、俺はここの領主に聞いた。
残花に問うと「この時期は木々が芽吹く時期だから、その名残なのだ」と答えるだけだった。
残花が何かを隠しているのは明白。だがそれが何なのか俺は知らない。もしかしたら、俺に知られたくないことなのかもしれない。
無理に知りたくはなかった。寧ろ、知ってはいけないような気がした。でも、知らなければならないと心の何処かで思ったのも事実だった。

ふと目を瞑れば、あの時の言葉が脳裏に浮かんだ。
「俺は昔、桜に生かされた。もう一度な」

あの夜はただ暗闇に月が桜色で輝いていた。

知りたい、知らなければ。
あの夜、俺は誓ったのだから…残花がこれまで生きてきた年月を、どんな思いで生きてきたのかを。例え、それが俺に害を及ぼす過去でさえも。
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