小噺(婆娑羅)

□柏餅の代わりにずんだ餅を。
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「蘭丸も兜が欲しいー!!」

「我が儘言うんじゃありません」
「そうじゃない!!飾り物の兜が欲しいんだよ!!」
「兜は着けて頭を守ってこそ兜ですよ」

「だけど…あ、信長様ー」
「信長公…」

「信長様、蘭丸も兜が欲しいです」

「……」

「信長公、私は貴男の兜が欲しいです!!」
「光秀…お前マジでキモいぞ」
「それは私への誉め言葉というものですから!!」

「…キモい」
「フフフフフフ。もっと罵倒してください」

ベシッ!!信長がハリセンで光秀を叩く。
「信長公、もっと叩いてもいいのですよ?いえ、叩いてください!!!!」

「……」信長がハリセンをしまう。


「何やら楽しそうではないか。我も混ぜてはくれないかね?」

「貴方は!!松永久秀!!」
「裏切り者が…」

「裏切り者とは酷い言い様じゃないかね。我はまた公の下に戻ったというのに」
「それが裏切り者なんですよ!!」
「卿にそれをいう権利があるのかね?浅倉を足利を裏切った卿に…」
「……」

「ときに…君は兜を所望するのかね」
「そうだ!!蘭丸は兜が欲しい!!」
「では我が君に兜を差し上げよう」

「え、いいのか!!お前案外いいやつだな」

「蘭丸いけません!これは罠ですよ」
「光秀に言われたくない!!兜くれないくせに!!」


「では、これでよろしいかな」と横に現れた風魔から兜を受け取り蘭丸に渡す松永の手には、お馴染みの三日月の前伊達…いや前立ての伊達の兜。

「松永!!!!」
それと同時に木の陰から飛び出した片倉小十郎景綱。

「おや…誰かと思えば卿じゃないかね、独眼竜の右目」
「俺を抜かしてpartyなんて、小十郎も酷いじゃねえか」奥州筆頭の伊達政宗が馬イクで塀を飛び越え突っ込んできた。

「あ!!伊達のにーちゃん!!」
「お前、俺の最高にCOOLなこの六十二間筋兜欲しいのか?」

「うん、にーちゃんの兜格好いいからな」

「それはどうもThank Youな。だがそれは俺の覚悟ともいえる大事なモンなんだよ、だから返してくんねぇか?」
そういって蘭丸の頭を撫でる。
「えー、どうしよかっな」

「てめぇ…」
小十郎が刀の鍔に手をかけて前に出た。
「小十郎、待て」
「政宗様…」

「ずんだ餅やる」

「そんないくらガキとはいえ、お菓子で釣れるほど安くは…「ならいいよ。お前に返す」

(安…っ)

「ヤス…ッ」
「政宗様…今、何か聞こえませんでしたか?」
「あぁ…恐らく奴だな。こっちに近づいてきている」

「イーエーヤースウウウウウ」
塀を飛び越え凶王三成が屋敷の庭に飛び込んできた。

「残念だがここに竹千代はいませんよ」
「貴様等に用はない。私は家康に用がある」
「家康ならここにいる、三成。用とは何だ?」

「貴様、私の柏餅食べただろう!!」
「ああ、あれか?お前の領民がお前のために作っていた餅か。さっき刑部が食べてたぞ?」
「嘘をつくな家康!!刑部がそんなに食べる訳…「おう、三成よ。ここにいたか」

「刑部…」
「ぬしの柏餅食べたのは我だ、すまなんだな」

「刑部がそんなに大食漢なんだと思わなかった私が悪かった。余程お腹が空いていたんだな、刑部、気づいてやれなくて私こそすまない!!」

「三成、一つつまんだら止まらなかったのよ。おぬしはまことに良き領民を持っている」

「HA!!じゃあ皆でずんだ餅食べようぜ。俺が作るからよ。手伝え、小十郎」
「御意」

「あ、兜が欲しいならこれやるよ。銃弾跡がついたプレミヤつき三十八間総覆輪筋兜。実家帰りにおふくろが持って帰ってきたけどいらねーし」

「信長公、あれですよね。あれ、信長公が最上に贈った兜ですよね」
「ん?魔王のおっさん、そうなのか?」
「…返してやるがよい」

「蘭丸もそんな銃弾跡がついたのなんかやだ」

「よし小十郎、早馬を飛ばせ」
「はっ」

「あ、それ忠勝に届けさせるよ。忠勝ー」
「………(ギュイイイン)」
「最上の所までこれを運んでくれ」
「………(ゴオオオオオ)」
「忠勝のずんだ餅の分も取っておくからな!!」
「………(ギュウウウン)」

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「蘭丸」
「何だよ、光秀」
「ずんだ餅美味しかったですか」

「うん!!」

END


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