銀遊記
□第2訓
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「はあ〜…」
森の中で大きなため息が聞こえた。
そのため息の先をたどると、森の、しかも獣道を6人の男たちが(あと1匹、竜みたいな生き物が一人の男の肩に止まっているが)歩いていた。
「三蔵、ため息がダダ漏れですよ」
「それがどうした」
どうやら先ほどのため息の主は三蔵であるらしい。
八戒は、いえ何でも、と言ってにこやかな笑顔を返した。
「三蔵、早くしないと置いて行くぜ」
「お前は早すぎるんだよ、バカ猿」
三蔵、八戒のだいぶ前を歩いていた悟空が言いながら振り返り、悟空の後ろにいた悟浄があきれたように言い返す。
「うるせー…」
「バカ猿じゃねーって―…」
「うるせーって言ってんだろうが!!」
ガウンッ!
銃音が森に響きわたった。
「うわっ、危ねーな。って、おい三蔵!
なんで俺まで!?」
「知るか。そこにいた、てめぇが悪い」
「なんとまあ、理不尽な話」
「何か言ったか」
カチャ
今度は銃のロックを外した音。
「あ、あのよ…」
と控えめな声を出したのは、三蔵たちの少し後ろを歩いていた銀時だった。
「わ、わりーな。俺らのせいでこんなことになっちまってよ。…な、大串君」
「大串じゃねーよ!
・・・あ、ああ。すまねぇ」
大串改め、土方は場の雰囲気を感じたのか、一瞬声を荒げたが、すぐに引っ込めたような声で謝る。
「気にしないでください。お二方のせいじゃありませんし、
仕方がありませんから」
「「(仕方がないを強めたΣ)…そ、そうですか……」」
八戒の何か黒いオーラを感じ取って、銀時と土方はさらに委縮してしまった。
「(うっわー。八戒、ぜってーキレてるな)」
「(今の八戒、ちょーこえー)」
「…チッ」
あーあ。一体何でこんなことになっちまったんだろ。
銀時はそんなことを思いながら、木々の隙間から見える空を見上げ、ほんの数時間前にあったことを思い返していた……。
『は?今、なんと』
『だから、そいつらをお前達の旅につれていけと言ったんだ』
悟浄のポカンとした一言に、観世音菩薩はあっさりと言い返した。
『俺が受けた命は牛魔王蘇生の阻止、それだけのはずだが』
明らかに、三蔵の声色は先ほどより、機嫌が悪そうで、また、低いものとなっていた。
『問題はないだろう。その命に連れていく奴を増やせってことなんだからな』
『理由を…お聞きしてもいいですか?』
八戒は真面目な表情のまま尋ねる。
『最近の奇妙な現象はお前達も知っての通り去ろう。その現象、牛魔王の蘇生実験に関わっているという話もある』
『だからって、何でこの二人を連れていくことになるわけ?』
『お前ら、こっちに来る前に何か見たんじゃないか?』
悟浄の問いかけを無視して、観世音菩薩は異世界からやってきたという二人を見た。
『何かって・・・あ』
『あの時の黒猫か…』
銀時、土方はこちらの世界へ来る前に出会った、
真っ黒な猫を思い出した・・・。
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