兎の姉弟。

□姉、来襲。
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今日も気だるい、万事屋の昼下がり。
溶けたように動かない万事屋主人とアルバイトを尻目に、唯一の働き者はせわしなく部屋の片付けをしていた。
何せ住居も兼ねているから、来客がなくてもどんどん散らかってしまうのだ。
従って、3人もいる部屋の中で動いているのは新八だけであるように見える。
しかし注意深い者が見れば、銀時の視線も落ち着きなくキョロキョロしているのに気付いただろう。
勿論、気配りのできる男、新八はそのことに気付いてはいた。
気付いてはいたが、下手に聞こうとすれば神楽が混ぜっ返し、天邪鬼な銀時が口を閉ざしてしまうかも知れない。
今の新八にできることは、気づかないふりをすること。そうすればそのうち―――
「おい神楽。」
ほらきた。
「何アルか。」
いつになくソワソワした切り出しに、神楽も上半身を起こして返事をする。
「お前今日から5日ほど、新八んちに泊めてもらえ。」
「何でアルか。」
「何でってお前……そりゃアレだ」
「アレってなんです?」
「アレとかソレとか、アレか、お前亭主気取りか。」
私はお前なんかに娶られるような安い女じゃないと、案の定混ぜっ返す神楽を宥めながら、新八もその理由を聞き出そうとした。
神楽を自宅に泊めるのは珍しいことではないし、姉のお妙も喜ぶだろう。
しかしそれはそれ、銀時の方からそう言い出すのは珍しい。しかも5日も。
理由が気になる。
またどこかのお家騒動にでも巻き込まれているのだろうか。
「アレはアレだよ。えー、男の子の日。」
「……ホントに何なんですかソレ。」
「いーから!300円あげるから!」
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