兎の姉弟。

□毒喪。
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1・事の起こり。

「銀ちゃん、ドクモって何アルか?」
「ドクモだ?」
銀時の頭に真っ先に浮かんだのは、とある携帯会社のマスコットキャラクターだった。
「銀さん、それド●モダケです。」
「ぱっつぁん、人の心読むのやめてくんない?」
「じゃあ解りやすいことばっか、考えないでくださいよ。」
ツッコミで答えておいてから、新八は神楽に向き直って言葉を続けた。
「ドクモって言うと、読者モデルのことじゃないかな?モデルとして雑誌とかに出てるけど、本業はモデル以外っていう。」
「ナニソレ。読者なのかモデルなのかはっきりしろヨ。」
「そんなこと僕に言われても、そういう職業なんだから仕方ないじゃないか。」
「ふーん。神楽、お前どこでそんな言葉覚えてきたんだよ。」
「最近流行ってるって、朱実が言ってたネ。」
「確かに流行ってますね。読モ出身の芸能人も多いですし。」
「ふーん。」
銀時はあからさまに興味が失せた様子で相槌を打ち、ジャンプのページをめくった。
「朱実もそのドクモらしいネ。銀ちゃん知ってたアルか?」
「ハァ!?」
銀時はジャンプを取り落として顔を上げた。
しかし、すぐに何かに気付いたらしく、視線をジャンプへ戻した。
「ああ、そりゃアレだ。毒物の「毒」に喪中の「喪」で「毒喪」ってヤツだ。」
「恐ろしい当て字ですね……」
「朱実は結局何者アルか。」
「独身でもてない、略して「毒喪」だそーだ。お前姉貴に担がれたんだよ。」
―――ソレまんま、テメーのことじゃねえか!!
2人の子供達の心の叫びは、雇用主には届かなかったと言う。


―――という話をしたのが数時間前。
雇用主は日課のパチンコに出かけ、神楽と新八と定春が、万事屋に残された。
「銀ちゃんはああ言ってたけど、新八はどう思うアルか?」
「……どうって、どう考えても朱実さんがもてないハズはないでしょ。」
「私もそう思うネ。どう考えてもでっかいコブのせいアル。」
「もうコブの域を超えた不良債権な気もするけどね。」
「……決めたアル。」
「……いい予感が1ミリもしないんだけど…………何を?」
「朱実に彼氏作るネ。……もちろん、新八も手伝うアルな?」
「…………よろこんで。」
―――何この展開。以前もこんな展開見た気がするんですけど。
女は花も団子も両方好きなもの。
それなりにお年頃の神楽にとっては、色恋沙汰も放っておけない話題の一つだ。
しかし花でもなければ団子でもない新八の気持ちなど、彼女にとっては考慮するという発想すら浮かばない。
今日も今日とて、振り回される男は溜息をつきながら女王様に付き従うのみだ。

万事屋を後にした新八と、定春に跨った神楽はかぶき町を歩いていた。
あたかもいつもの散歩のようだが、神楽の中で目的地は既に決まっている風だ。
新八はその目的地をまだ聞かされていない。
「でも、具体的にどうするつもりなの?僕らは朱実さんの好みすら知らないわけだけど。」
「新八にしてはいい質問ネ。」
遥か高みからの目線で、神楽は得意げだ。
何か作戦は考えてあるらしい。
「まずは敵を知るべし―――とりあえず好みを調べるために、色々ぶつけてみるネ。」
「ただの総当たり戦じゃねーか!」
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