伸ばした手の先。

□DISTANCE
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幸せだった。
彼が、彼といられて。



彼の髪が好きだった。

彼の瞳が好きだった。

彼の声が好きだった。

彼の手が好きだった。

彼の腕が好きだった。

彼の




彼の全てが好きだった。















「死に、一番近いのは俺だと思っていた。」


もう何度呟いたかも知れない言葉を吐く。風さえもそれに答える事はせずに、周囲で音がたつ事はなかった。
それは彼の言葉を大きくし、独りという事実を増長させる。


空ろな瞳は腕の中の生気の無い彼を映していて、青年はもう一度繰り返した。


「死に、一番近いのは俺だと思っていた。」


血液や、土で汚れてしまった髪の毛に触れる。いつものさらさらの髪の毛はそこになく、微かにべたつきざらついたそれは青年が愛したそれとは全く違うものだった。


腕の中の彼を抱き締める。
いつもならばすぐに心地よい束縛がくるはずが、今日はそれがない。



否。今日からそれがない。










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