伸ばした手の先。

□An offering.
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硬い笑顔だな、と思った。まぁ、そうさせているのは僕なんだけれど。



ああ。僕の言動一つ一つに反応を示してくれる貴方が愛しくて仕方ない。

悪い奴だなぁ。


貴方を困らせて楽しむなんて。





解らないようにクスリと笑って、彼の手袋に包まれた手を掬って天使の微笑み。
貴方が好きだと言った、至極自然な笑み。


「僕に、会いに来てくれたんでしょう?」

「…。




そうだよ。」


中途半端な短さの沈黙。細やかな貴方からの反抗。

言葉に出来ないくらい全てが愛しくて仕方ない。










どうしてあんなに好きだったんだろうか?


きっとそれは誰にも解らないんだろうな。



大好きだった優しい微笑みが、頭の中から段々と削除されていく。




足下には白のシャツを赤く染めた彼。
僕の大好きな優しい微笑みを携えた彼が、転がっている。


「全く。本当に馬鹿ですね。」


闘いの最前線。
貴方、強い筈でしょう?
何簡単に死んでるんです?


しかも、AKUMAに撃たれて。



仲間に殺されるなんて、滑稽にも程がありますよ。


「…バカヤロウ……」














敵を庇ってだなんて。
笑えやしない。





最初で最後の悪態を吐いて、僕は貴方に背を向けた。


貴方が死んだからといって、僕が後を追うなんて大間違いです。勝利したのはエクソシストなんですから。勝者は僕なんですから、僕はこの世界をもう少し楽しみます。

精々、指でも咥えて見ていて下さい。







「アレーン!帰るさー!
置いてっちまうぞー?」

「あ、待って下さい!今行きます!」


仲間の声に笑顔で走り出す。







ねぇティキ。僕はこれからも笑い続けます。

その笑顔は、貴方が大っ嫌いだと言った作り笑顔かも知れないけれど。





先に逝った馬鹿野郎には関係ありませんよね。


好きでしたよ。
そんな馬鹿な所が。









最初で最期の僕からの告白。
死者への手向け。










fin...

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