伸ばした手の先。

□DISTANCE
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『死』に一番近いのは自分だと思っていた。









-DISTANCE-












森の中には二人だけだった。彼等の周りにはつい先刻の闘いの後がありありと晒されていて、見る者は口を覆うだろう。

ほんの数分前までは確かに『何か』の形を成していたというのに、今やそれはただの残骸だった。


そんな中で二人。
否。独りで彼は空を見上げていた。暗く、樹々が鬱蒼とする森は太陽の光が射す事はない。当然空も見える筈はないが、彼は確かに空を見ていた。

真直ぐに、透き通るような青空を見上げていた。


「死に、一番近いのは俺だと思っていた。」


鋭い目付きが印象的な黒髪の彼が小さく呟く。歳の頃は18だろうと推測される青年は見えない空からゆっくりと腕の中へ視線を移した。
青年の腕にはまた新たな青年が大切そうに抱き締められていて、彼等は傍から見れば抱き合っているようにも見られた。けれど腕の中の赤い髪の青年に生気は感じられず、力なく下げられた腕が青年が生者ではないことを示していた。


「大体、お前は俺より先に死なないと言った筈だ。


俺を騙すのか?」








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