☆薄桜鬼☆
□泡沫
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関ヶ原以来の恩を返すためと一族のために京へ上ってきた。
京の街は普段と変わらない様子にみられるが、町民たちはいつ戦に巻き込まれるかとヒヤヒヤしていることがわかる。
道の向こうから1人の少女が走ってきた。どうやら何かに追われているらしい。
普段なら気にも留めない光景だが、その少女が近づいてきたときにふと違和感を感じる。
それは側にいた天霧も同じようだ。
「娘、どうした?」
声をかけると娘は涙ぐみながら助けを求める。
「攫われたところを逃げてきたんです。助けてください。」
「天霧。」
天霧は分かっていたようで娘に声をかけると抱えて消えた。
そのすぐあとに商人のような男が現れる。
「ちっ、どこ行きやがった。兄ちゃん、娘をみなかったか?」
「娘?どのような娘だ?」
「みてないならいいんだ。中々手に入らない代物なのに目を離したすきに逃げやがった。」
そういうと男は去って行く。
「中々手に入らない代物…そうだろうな。」
「風間の邸に連れて行きました。」
戻ってきた天霧が報告する。
「あの男を追ってどこから連れてきたか吐かせろ。必要なら始末しておけ。」
「御意。」
普段なら殺生ごとを好まない天霧も今回は違うようだ。
天霧を見送ったあと、一度邸へ戻ることにした。
屋敷では侍女たちが慌ただしく動いていた。
「お館様、おかえりなさいませ。」
侍女頭が玄関にかけつける。
「天霧様がお連れになった女子ですが…」
「俺の部屋に連れて来い。」
続きを聞く前に指示を出す。
「では、支度が整いましたらすぐに。」
何かいいたそうな侍女頭はそのまま下がる。
半刻後。
「失礼いたします。お連れしました。」
「入れ。」
その言葉を聞いてふすまが開く。
侍女頭の後ろにいた娘は薄緑の着物を着て頭を下げている。
近づいて行き「顔を見せろ。」と声を掛けると娘は恐る恐る顔をあげた。