☆薄桜鬼☆

□心移り
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齋藤さんと平助くんが新撰組を離れることになった。

離れるまで知らされていなかった私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
齋藤さんと密かに恋仲だった私は本人からその事実を聞かされていなかったことが一番辛かった。

私はその程度の存在だったの?

齋藤さんがいなくなってから何もかもやる気にならずまわりが色褪せてみえる。
いなくなる前からわかっていたことだせど、やはり私にとって齋藤さんはなくてはならない存在であったのだと改めて思い知る。
幹部の皆さんは私の様子をみて心配をしてはくれるも深く触れてはこなかったのでそれが逆に助かった。
御陵衛士と新撰組が会うことは禁止されているから齋藤さんには二度と会えないだろう。
日々、齋藤さんへの想いだけが募っていった。


「はぁ。」

「さっきからため息ばかりどうしたの?」

後ろから声をかけられて驚いて振り向くと巡察帰りであろう沖田さんがいた。

「おかえりなさい。」

「ただいま。」

にこっと笑う沖田さんの目は私の心を見透かすようで怖くなり目をそらす。

「そういえば巡察中に一君をみかけたよ。」

「えっ!?」

齋藤さんの名前に反応してしまう。

「綺麗な子と歩いていたな。さすがに声はかけられなかったけど。」

「そうですか…綺麗な方と…」

齋藤さんに限ってという思いと私のことはもう忘れてしまったのかという思いが交差する。

「ゆきちゃんも可哀想だね。一君に振り回されてさ。」

沖田さんのとげのある言葉にちくっと胸が痛む。

「君にとっては初恋だったのかな?」

初恋…だった。

「わ、わたし、仕事があるのでこれで。」

泣きそうになりその場をあとにしようとすると腕を掴まれ引っ張られる。
バランスをくずした私は沖田さんの胸の中にもたれる形になった。

「ねぇ、一君なんかやめて僕にしなよ。」

耳元で沖田さんに囁かれてぞくっとする。

「君を置いて出ていったんだよ。恋仲の君になにも言わずに。」

「そ、それは…」

齋藤さんを信じたい。
そう思う心の隙間には齋藤さんを疑う気持ちもあってその黒い部分を沖田さんの言葉が支配していく。

「ねぇ、一人で寂しいでしょ?」

そういうと沖田さんは私の首筋に唇を這わせる。

「なっ、沖田さん…」

「僕のものになっちゃいなよ。」

「冗談はよしてください。」

そういって逃げようとするも男の力には敵わない。

「僕は本気だよ?」

沖田さんは私の体を抱えると近くの物陰に入っていく。
それと同時に前から抱きしめられた。

「本気が伝われば僕のものになってくれる?」

「そ、そういう問題じゃ…」

言葉に詰まると突然唇を塞がれる。
少し乱暴だけど快感を与えてくれるキスに抵抗が出来ない。

「あっ…ふっ…」

体の力が抜けてしまい膝が折れそうになり沖田さんに支えられる形になる。

「感じやすいんだね、ゆきちゃんは。」

「このまま奪っちゃってもいいんだけど、君から僕が欲しいって言わせたいな。」

にやっと笑い襟元をがっと開ける。

「いやっ、なにを」

拒絶間も無く沖田はゆきの白い肌に吸い付く。
ちくっとした痛みのあと沖田が離れる。

「この印が消える頃にはきっと僕が欲しくなるよ。」

そういって離れた沖田は出て行った。

「私は斎藤さんを…」

そう呟きながら沖田につけられた印を隠すように着物の乱れを直す。

「斎藤さん…」

ぼそっと呟くと同時に涙が流れる。

あぁ、この想いをいっそ捨てられたら。
そのまま静かに涙を流した。

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