☆薄桜鬼☆

□My sweet lady
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「ゆき、カラオケ行こう!」

「ごめん、今日は外せない用事があるの。」

友達の誘いを断って優先すべき用事のために私は急いで家に帰る。
家につくと道場からは稽古の声が響く。

「おい、てめぇらたるんでるぞ。」

その怒声に胸がきゅんとする。
別にMとかそういうわけではなく、声の主が片思いの相手だから。
着替えて道場に向かうとトシくんは私に気付いて声をかける。

「おぅ、ゆききたか。」

たったそれだけのことなのに嬉しくなるのは好きだから。

「なんだよ、トシさん。ゆきだけには優しくてさ。」

一つ下の平助くんが文句をいう。

「ほんと、ゆきには甘いからな。」

新八さんも便乗してくる。

「あっ?可愛い妹に優しくしてなにか問題があるか?」

妹…

その言葉に頭を殴られたような衝撃を受ける。

「さて、稽古を続けるぞ。」

トシくんの声でみんな稽古に戻っていく。
私はそのあとの稽古に集中できないままだった。

「お疲れさまでした。」

一人、また一人と帰っていく。

「なぁなぁ、今日のゆき変だったぞ。体調悪いのか?」

平助くんが心配そうな顔をして声をかけてくれる。

「そうかな?別にいつもと変わらないよ。」

「そうか?なんかいつもより隙だらけだったから。」

さすが、うちでもトップクラスの腕前の子。
見てるところが違うわ。
妙に感心していると

「あっ、薫さんだ。」

という声が聞こえた。
薫は私のお姉ちゃん。日本美人とはお姉ちゃんのことではないかと妹ながら思うくらい綺麗。
だから生徒さんでお姉ちゃんに憧れる人は多い。

「トシ、ちょっといい?」

お姉ちゃんはトシくんを呼ぶ。

「いやー、美男美女でお似合いだよな。」

平助くんが何気なくいう言葉に更に傷つく。

きっとお姉ちゃんはトシくんが好き。
トシくんもきっと…

泣きそうになりながら片付けをする。

「おい、ゆき」

気付くとさっきまでお姉ちゃんと話をしていたトシくんは私の後ろに立っていた。

「今日のお前の稽古態度はなんだ。」

トシくんは怒っていう。
平助くんが気付いたんだからトシくんが気付かないわけない。

「集中できねぇなら稽古に参加するな。」

怒鳴られてびくっとすると同時に涙が出てくる。

「トシくんなんか…」

涙と一緒に言葉を吐き出す。

「トシくんなんか、嫌い。」

トシくんは唖然としているけど、そんなの知らない。

私はそのまま道場をあとにした。
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