‡戦争ノ火ノ粉‡

□世界ノ過去ト、カマイタチ
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「…。」
「どう?読めるの?」
憂(うい)が黙りこくって何もしゃべらないため、ユラは口を出した。
憂は難しい顔をしていた。

「っ!おい、ユラ!この本どこで見つけた!」
憂はハッとしてユラを睨みつけた。
決して威嚇しているようには見えなかった。
「どこでって…、だから、地下の図書館って言ったじゃないか。」
ユラは半分リグの人格が出て、呆気に取られた。
驚きのあまりに憂は、忘れていた。
憂は本に目を向け、パラパラとページをめくった。

「これは、この世界。“シュハーノ・ラフュール”の歴史が描かれている本だ。この文字は…、私の先祖が書いた本だ。スヴィジシャン語で書かれている…。」
「で、それで?なんて書いてあるの?楽しみだなっ。」
ユラからディライトの人格が出てきた。
憂は口を開けた。

「昔、私達魔女は、グローリィ一族と敵対していた。しかし、魔女には力及ばずで、次々と魔女は消えていった。そして、約3615世代目の魔女が産まれた日、死ぬ直前の魔女は、伝説の人格分立宝石、ペルリティをヒュラナ氷山の頂上に、魔法で封じ込んだ。ヒュラナ氷山には、強力なポケモンが住んでいて、立入禁止となっている。…だとよ。」
憂は深呼吸をした。
ユラは首をかしげ、
「それだけ?」
と聞いた。
憂は、首を縦にも横にも振らなかった。
「あとは読めない。」


「ペルリティ…。欲しいわね…。」
ユラはルストの人格をあらわにした。
「だが、あくまでも歴史だ。本当かどうかは見なきゃ無理だぞ。」
憂はビシッと言った。
ユラは少しシュンとなった。
その時、ユラはハッとしたような反応をした。
「う、憂さん!グローリィ一族ってもしかして…。」
憂はゆっくりうなずき、
「そう。ミマイルの先祖だ。そして、私が魔女と認定される前の魔女を封印したのは…。」
と一度深呼吸して、真剣な空気を生み出した。







「カマイタチの谷の長、アル。アル・グローリィだ。」
ユラは一瞬、目を見張った。
アルのことを聞いたことがあった。
ユラが聞いたアルの話は、“世界をも食らいし者”
大地を駆け巡り、空を撫でるように見上げ、海の能力を飲み込み、森の自然を楽しみ、谷を楽々と乗り越え、山奥に潜みし者。
彼の名は、アル。
栄光を逆らい、栄光の一族に成り済ました。成り済ますにつれ、自分は栄光の一族と思うようになった。
そして、いつしか自分は世界をも食らいし者と思い出し、谷へこもる。谷の名はカマイタチの谷。
額には世界をも食らいし者の証が深い傷のように刻まれている。
そして、ユラが見たのは、その本に額にななめ傷を持ったアブソルが世界をも食らうような古代的な表紙が描いてあったのだ。

一つ疑問がある。
今現在、シュハーノ・ラフュールは、インディアンのような絵が、いっぱいあるが、あの本は今ある本よりも、かなり古そうだった。
アルは何時生まれた?
アルはどうやってこんな時代まで生きてきた?
アルは何者なのか?
それは誰も知らなかった。
いや、知ることができないだけだ。
アルのことは誰もかも神に近い存在と思っている。
誰が死のうと、アルは平気な顔で生きていた。
はやり病も、ポケルスも。
何が起こっても患うことは無かった。

アルのかまいたちはミュウツーを一撃で倒した。
アルのかまいたちは他のアブソルよりも、圧倒的な強さを誇っていた。



「ミマイル達、ラゾ滝の滝を割るみたいだよ?」
ユラはアクチュアルディスクを指差した。
ミマイルは、ラゾ滝をじっと見ていた。
「ラゾ滝?あぁ、封鎖の滝か。そういえば、ラゾの奥底には秘宝があるって聞いたが、あれは嘘だ。要するに罠だ。」
憂は、古代的な本を解読しようと頑張っていた。
ユラは関心し、憂の本を見つめた。
だけど、ユラには解読なんて出来るわけが無かった。
魔女でもない、人格を組み込まれた特殊な。
普通のエーフィだから。
「…嘘なんだね。」
「ああ。」


グレットは風に涼んでいた。
こうやっていると、風と共に嫌なこととか、飛んでいきそうだったから。
「あのー。すいません。ユラ・ルロウラっていうエーフィを探しているのですが…。」
そこらへんに偶然あった水たまりから、右耳に弾けた感じの形をしたリングをつけたシャワーズが、グレットに訪ねた。
「何のようだ。」
グレットはシャワーズ睨みつけた。
「ひっ!ボ、ボクはウォンダー。お、驚きのウォンダー・ルロウラです。あ、姉を探しに来たんです!」
ウォンダーというシャワーズは怯えながら言った。
グレットはウォンダーに近づいた。
「お前の母親はユラが殺したはずだが、どうしてお前は、ここにいる?」
グレットはウォンダーを見下ろしながら聞いた。

「か、隠し子っていうのは嘘ですが…。ボ、ボクは姉達よりも早く独立して、ち、違うところに住んでいたんです!」
ウォンダーは答えた。
グレットは後ろに下がった。
「連れてってやる。乗れ。」
グレットは、そう言いながらしゃがんだ。
ウォンダーはうろたえながら、グレットの背中に乗った。

To be continue…
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