BL

□少年はダイスに願う
1ページ/1ページ

いったいこれはどういうことだ。

「よっ真ちゃん。また前後だな!!」

にこにこと笑うこいつは嫌いではない。むしろ無表情の方が気持ちが悪いし、第一、試合中や練習中以外は大抵笑みを絶やさない。まあ喧しいという表現が適しているかと思う。

ところで、席替えというイベントをご存じだろうか。
俺は人事を尽くしているので、運が悪い筈はない。今日の蟹座のラッキーアイテムも持っている。なのに……

どうしてこうなった。

年はダイスに願う

ことの発端は5月のこと。
「席替えするぞー」という担任の一言により、俺と高尾は席が前後になった。
まあ1ヶ月の辛抱だ、なんて思っていたが、一ヶ月後もその次も、こいつの黒髪が目の前にあった。
授業中でも隙あらば話しかけてきたり、わけのわからんメモを回されたり、まあ人事を尽くす俺の成績は下がることはなくとも、授業に集中はできなかった。
お察しの通り、現在2月まで、紆余曲折はありながらもずっとこいつの後ろで授業を受けていた。

「お前はくじになにか呪いをかけているのか…」

と言えば

「へ?いや真ちゃんじゃあるまいし。んなことはしねーよ。」

といい、へらっと笑う。
それでも、ここまで一緒だとなにか運命に導かれているとしか思えない。
が、古文の解説を聞きながらも、いつの間にか目の前にさらさらとした黒髪があるのが当たり前になっている自分に気付いた。
目の前だけでなく、バスケをしているときは視界のどこかには高確率でいるし、そうでなくとも隣にいることも多い。リアカーを運転しているときだって前にいる。
また彼の"目"の特性からして自分も彼の視界のどこかに必ずいるのだと思う。
それが、嫌じゃない。むしろ暖かくすら感じた。
帝光にいたころは、自分の周りにはなんとまあ、カラフルな人間しかいなかった。自分を含めて。それすらも、自分を好んでいるわけではなく、"才能"があるから共にいるのだった。唯一、嫌われてないのは赤司だったが、彼だってあの時…黒子がいなくなった時から、大きく変わってしまった。
それが今では、必ず互いの視界のどこかに互いが存在するような、"相棒"とよべる者がいた。
確かに高尾はうるさいし、随分変わっていると思う。だが、彼のことは心の底から信頼できた。バスケにおいても、日常においても。
信頼しているのは彼だけではない。キャプテンも、宮地先輩も、木村先輩だって、俺は信頼しているし、"キセキの世代"という理由だけではない、自分への信頼も感じた。
だが、高尾は特別だった。

三月になって、高尾は目の前にはいなくなった。だが消えたわけではない。
秀徳高校は、基本男子の方が多い。そのため、どうしても隣が男子になる所がある。

「なあ真ちゃん。さすがにこれ運命なのだよ、で片付けらんないレベルだよな。」
「俺は人事を尽くしただけなのだが、それと真似をするな。」

なんということだ。俺の隣に高尾がいた。

「ま、今更感パないけど、一ヶ月間よろしくでっす!!」
「本当に今更だな。」

一ヶ月間経ったら、クラス替えがある。
俺はまた、人事を尽くすだけ。

4月。クラス発表の貼り紙の前へ。
さあ、どうなっているかな。


fin?

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ