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□愛の天使が囁く日
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枕元でアラームが鳴る。
俺はむくり、と起きあがると、横でけたたましく鳴り響く目覚まし時計をぶっ叩いた。
6時丁度。
まあ、まだまだ寝ていたいけれど、朝練に行かねばならない。
負けるよりは練習した方がずっといいことをWCで思い知ったからね。
はー、めんどくさ。
ため息一つ、カレンダーを見る。
2013年2月14日。
今日の日付には、ピンクでバレンタインデーと小さく書かれていた。
愛の天使が囁く日に
「ねー室ちん。モテモテなのは構わないけど、後でそのチョコ分けてってか頂戴。」
「ちょ、アツシ!?…うん、わかったよ。」
朝練が終わり、HR前。
すでに室ちんは、抱えきれないほどのチョコを貰っていた。
俺は俺でいくつか貰ったけど、室ちんのに比べたら無に等しいレベル。
まあチョコ後でくれるらしいからいいけど。
ふと、時計をみるとHRが始まりそうになってた。
「室ちん、時計見たら?」
「え?…ってうわ、もうこんな時間。HR間に合わないからまた後でね、アツシ。」
そう言って室ちんは二年の教室に帰って行った。
本当は、モテモテなのは構わなくなかった。なんで室ちんはあんなにモテるんだろう。
前に、クールで大人っぽい所が素敵、だなんて女子が騒いでいたのを思い出した。
でも、室ちんって意外(?)とドジだし(俺が言えたことじゃないけどね)、むしろクールなのはバスケスタイルと外見ぐらいじゃないかな。
室ちんのこと全然わかってないくせに、なんて少し思った。
あー、これが嫉妬ってやつかな。
放課後、部活に行こうとしたら、同じクラスのバスケ部員(二軍だし名前も曖昧)から、今日の練習はない、と言われた。
どうしてかは分からないけど、自主連もダメらしい。
どうやら主将が酷い精神状態だからだそうだ。
ということで帰り支度をしていると、室ちんが来た。
「アツシ、良かったら一緒に帰ろう?」
「うん、いいよー。」
見ると室ちんの紙袋は三つに増えていて、しかも全部はちきれそうになっていた。
「氷室先輩、すげーな。」
そのバスケ部員はそう言うと、お先に、とばかりに帰って行った。
帰り道、二人きり。
「ねー室ちん、チョコ。」
「はいはい、わかってるよ。」
一袋目を渡される。
本当に良かったのかな?一応これって女子の気持ちなわけだし…。まあ、女子より俺の方が室ちんのこと分かってると思うけど。
一番上の箱を手に取る。
「!!」
見ると、それには、きれいな英語で『present for Atsushi!!』と書かれていた。
「室ちん、これ…」
室ちんは少し頬を赤らめると、俺からアツシへのバレンタインチョコだ、と言った。
今まで貰ったどんなチョコ、いやどんなお菓子より嬉しかった。
心の底から、喜びとか色々が沸き上がるような感覚。
気付けば室ちんを抱き締めていた。
183あるとは言え、俺よりかなり小さなこの塊を、すごく愛しいと思った。
「ちょ、アツシ!!?」
「室ちん…大好き。」
自分でもびっくりするぐらい低い声が出た。
案の定、というか室ちんは真っ赤で。
「苦しい…っから…」
気付いたらかなり強く抱き締めていたらしい。
「あー、ごめん。」
慌てて離れる。
「全く…あ、チョコは今食べてもいいけど中の手紙は今読まないでくれ!!」
「なんで?」
「いいから!」
「んー、わかった。」
家について手紙を読んで、その直後室ちんに電話して、愛してるなんて言ったのはまた後の話。
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