BL

□愛の天使が囁く日
1ページ/1ページ

枕元でアラームが鳴る。
俺はむくり、と起きあがると、横でけたたましく鳴り響く目覚まし時計をぶっ叩いた。
6時丁度。
まあ、まだまだ寝ていたいけれど、朝練に行かねばならない。
負けるよりは練習した方がずっといいことをWCで思い知ったからね。
はー、めんどくさ。
ため息一つ、カレンダーを見る。
2013年2月14日。
今日の日付には、ピンクでバレンタインデーと小さく書かれていた。


愛の天使が囁く日に

「ねー室ちん。モテモテなのは構わないけど、後でそのチョコ分けてってか頂戴。」

「ちょ、アツシ!?…うん、わかったよ。」

朝練が終わり、HR前。
すでに室ちんは、抱えきれないほどのチョコを貰っていた。
俺は俺でいくつか貰ったけど、室ちんのに比べたら無に等しいレベル。
まあチョコ後でくれるらしいからいいけど。
ふと、時計をみるとHRが始まりそうになってた。

「室ちん、時計見たら?」

「え?…ってうわ、もうこんな時間。HR間に合わないからまた後でね、アツシ。」

そう言って室ちんは二年の教室に帰って行った。

本当は、モテモテなのは構わなくなかった。なんで室ちんはあんなにモテるんだろう。
前に、クールで大人っぽい所が素敵、だなんて女子が騒いでいたのを思い出した。
でも、室ちんって意外(?)とドジだし(俺が言えたことじゃないけどね)、むしろクールなのはバスケスタイルと外見ぐらいじゃないかな。
室ちんのこと全然わかってないくせに、なんて少し思った。

あー、これが嫉妬ってやつかな。


放課後、部活に行こうとしたら、同じクラスのバスケ部員(二軍だし名前も曖昧)から、今日の練習はない、と言われた。
どうしてかは分からないけど、自主連もダメらしい。
どうやら主将が酷い精神状態だからだそうだ。

ということで帰り支度をしていると、室ちんが来た。

「アツシ、良かったら一緒に帰ろう?」

「うん、いいよー。」

見ると室ちんの紙袋は三つに増えていて、しかも全部はちきれそうになっていた。

「氷室先輩、すげーな。」

そのバスケ部員はそう言うと、お先に、とばかりに帰って行った。

帰り道、二人きり。

「ねー室ちん、チョコ。」

「はいはい、わかってるよ。」

一袋目を渡される。
本当に良かったのかな?一応これって女子の気持ちなわけだし…。まあ、女子より俺の方が室ちんのこと分かってると思うけど。

一番上の箱を手に取る。

「!!」

見ると、それには、きれいな英語で『present for Atsushi!!』と書かれていた。

「室ちん、これ…」

室ちんは少し頬を赤らめると、俺からアツシへのバレンタインチョコだ、と言った。

今まで貰ったどんなチョコ、いやどんなお菓子より嬉しかった。
心の底から、喜びとか色々が沸き上がるような感覚。
気付けば室ちんを抱き締めていた。
183あるとは言え、俺よりかなり小さなこの塊を、すごく愛しいと思った。

「ちょ、アツシ!!?」

「室ちん…大好き。」

自分でもびっくりするぐらい低い声が出た。
案の定、というか室ちんは真っ赤で。

「苦しい…っから…」

気付いたらかなり強く抱き締めていたらしい。

「あー、ごめん。」

慌てて離れる。

「全く…あ、チョコは今食べてもいいけど中の手紙は今読まないでくれ!!」

「なんで?」

「いいから!」

「んー、わかった。」









家について手紙を読んで、その直後室ちんに電話して、愛してるなんて言ったのはまた後の話。


-----------fin

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ