BL
□未来のことはわからないけど
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※24歳くらいな黄黒。
※同棲してます。
※黄瀬はモデル、黒子は主夫(一応作家)みたいな。
●・‥…――――…‥
1月31日。
世間一般では、なんてことない1日。月末で銀行や企業の方は忙しいかもだけど、俺からしたら彼らよりも大事なことがある。
愛しい黒子っちの誕生日!!
なのに。
「オフじゃなかったんですか?」
「ごめんッス!!本当、ガチでマネージャーとは交渉したんスけど、どうしてもって…撮影だけだし、早めには帰ってこれるッスから!!本当、ごめん!!」
今、黒子っちはショック受けてるみたい。それはそうだ。年に一度の大切な日なのだから。
しかし、世は無情。
31日の撮影は、事務所の先輩のものだった。けれど、先輩の母が亡くなったとかで急遽俺がやることになった。
まるで青峰っちの所のキノコみたいに頭を下げ続ける俺に、黒子っちははぁ、とため息をつき、こう言った。
「…わかりました。じゃあ、黄瀬くんを待ってます。」
少し、残念そうではあるが、起こってはいない。
「ありがとッス!!本当ごめん!!」
「いいですよ。黄瀬くんが頑張って交渉してくれたのはわかってますから。」
少し口角を上げる。この表情の微妙な変化は、慣れないと難しいかもしれないけど、照れながらの微笑み。
黒子っち可愛い!!
「あーもう黒子っち愛してるッス!!!!」
こみ上げる愛しさを押さえきれず、黒子っちに抱きつく。
「苦しいです。離さないなら31日待ってあげませんよ?」
「それは勘弁ッス。」
慌てて身を引く。黒子っちは少し深呼吸して、もう寝ます、と言った。
時計の針はもうすぐで30日の2時を差す。明日は仕事普通にあるし寝ないとまずい。
よし、31日は何としてでも早く切り上げてやる!!
●・‥…――――
「黒子っち、ただいま!!」
31日七時半。マネージャーやスタッフさんは帰って欲しくないみたいだっだが、どうしても、と無理を言って切り上げさせてもらった。
因みに、今日の朝はかなり早く起きたので黒子っちには会ってない。
「黄瀬君…!!」
「黒子っち……お誕生日おめでとうッス。」
黒子っちを抱き締める。端から見れば明らかに滑稽だろうが、気にしない。
「ありがとうございます。…すいません、パスタ焦げちゃうんで離してくれますか?」
「あ、すまないッス。」
ぱっと手を離す。
「すいません。後で…その………」
顔を朱に染める。なんとなく意味は分かったので、
「…あー、大丈夫。一緒にいてあげるッス。」
「…!!!ばか。」
ふい、と去っていく黒子っち。全く、可愛いとしか言えない。って、今日黒子っちの誕生日なのに俺が喜んでどうする!!
まあ、それでも俺には秘密兵器があるんスけど。
服を着替え、荷物を置いてダイニングへ行くと、いつもより少し豪華に夕飯の皿で彩られたテーブルが目に入る。
「ちょ、黒子っち頑張りすぎッス!!誕生日くらい!!」
「すいません。なんか作ってるうちに盛り上がっちゃって………。」
にしてもやりすぎだ。
しかし、愛故だ、と考えれば可愛くてしかたない。
●・‥…―――――
食後、先程言ったとおり一緒にいる俺と黒子っち。
退屈そうなので、秘密兵器を投入することにした。
「黒子っち、誕生日プレゼントッス。」
「なんですか?」
「ふふ、」
「……!!!」
黒子っち、凄く驚いてる。
そりゃそうだ。宝石の付いた指輪が誕生日プレゼントなのだから。
「黄瀬くん…これ…」
「結婚指輪ッス。」
真っ赤な黒子っち。同棲しているんだし結婚も同然だが、不意に指輪を渡してないと気付いたので、渡すことにしたのだ。
そして、サプライズはもう一個。
まあ我ながらキザだとは思うが、本心からのものだ。
「黒子っち、俺、本当に感謝してるんス。生まれてきてくれて、ありがとッス。」
「!!僕だって…その…」
「今日は黒子っちが主役なんス。言わせないッスよ?だってこれは誕生日プレゼントッスから。」
「ありがとうございます!!」
「…キス、していいッスか?」
「…はい」
柔らかく、触れるだけの接吻だが、今はそれで充分。
「お誕生日おめでとうッス。」
「ありがとうございます。…あの、」
言いたいことはわかった。それは俺の意志に一致していた。
俺はソファに黒子っちを押し倒し、笑う。
「…明日休みッスからね、ま、黒子っちの為に。」
そしてまた、接吻。今度は、深く、深く、溶け合うような。
黒子テツヤ24歳の最初の夜は、俺と迎えることになる。
未来のことはわからないけど
(来年も再来年もずっと一緒にいたい。)