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□愛とは如何なるものでしょうか
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人間は子孫を残すために生きる。
そしてそのための道具こそが、愛の正体である。
そんな言葉をこの前、なんかの本で見た。
普通の人からしたら、軽い言葉、眠くなるような言葉かも知れない。
でも、もし真実がそうであれば、自分の生きる意味はなくなる。
だって今、自分の恋愛対象は、ほかの誰でもない、同性の緑間真太郎だから−−−−。
真ちゃんと同じ高校に入って9ヶ月。好きになって8ヶ月。両思いになって5ヶ月。
もうすぐ半年たつ。
そりゃあ、健全なる(?)高校男子であるからには、やはりそういうこともしてきたわけだ。でも、いくら体を重ねても、いくら愛し合っても、あの言葉の言う"生きる意味"は叶うことがない。ましてや愛を道具にすることすら不可能だ。
考えれば考えるだけ、何故自分がそんな人間なのか、わけがわからなくなる。
ある日。部活前に部室で堂々巡りの脳内討論をしてたら、真ちゃんに見つかってしまった。
「どうしたのだ高尾。そんな顔してると気持ち悪いぞ。」
「自分の顔なんか見ねーし…はぁ。」
確かにそうかも知れない。
挙げ句の果てにため息まで吐いてしまった。
真ちゃんの顔に少し視線を移せば(俺的にはズーム)、9ヶ月の積み重ねでやっとわかるくらいの微妙さで、心配の色を宿していた。
「なあ、真ちゃん。この言葉、知ってるか?」
人間は子孫を残すために生きる。
そしてそのための道具こそが、愛の正体である。
「……なんだその変な言葉は。」
「こないだ本で読んだの。……なぁ、もしこれが真実なら、俺に存在価値はあるのかな?」
「ばかめ。…そんな言葉などに惑わされるな。いつものようにへらへらとしている方が高尾にはお似合いなのだよ。」
いつもなら、『なに、真ちゃんデレ期?ww』のような感じになるのだが、今日ばかりは違った。
気高きエース様が、精一杯発したその言葉は、俺の胸に強く響いた。
「ふっ…そうかもな。…真ちゃん、ありがとう。」
なぜか、軽く目が潤んだ。試合中にはチームの力になれるホークアイを持つ自らの目には、やはり少年らしくじんわりと涙がにじんでいた。
「本当にどうしたのだよ。お前らしくない。」
「俺が知りたいくらいだっつの。」
潤んだ視界の中で、緑間は心底心配そうに、そして愛しそうにおどおどしていた。
…どーやら俺は遅れた厨二病にかかっていたらしい。
存在理由なんて誰かが決められるわけじゃない。わかりきったことじゃないか。
今、俺がここにいる意味は、緑間の"影"として、また、唯一無二の人として、存在しなければならないから。
俺の価値なんか俺が決めてやるさ。
愛なんか道具でも何でもない。
俺たちにとっては、信頼の延長線上にある、二人をつなぐための"建て前"だ。
「…真ちゃん、大好き。」
愛とは如何なるものでしょうか。
やっぱり明るいのが俺だわ、と言えば、顔を真っ赤にしながら笑う真ちゃんが可愛くて、ついその唇を自分のそれに重ねた。