BL短編

□振り払う手に捧ぐ愛
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※カノシンでR15
※カノさんが軽く最低
※シンタローくんかわいそう










「……あー。ごめん、萎えた」
「……、は?」

率直に素直な感想を述べると、天井を背負う僕を見上げる体勢になっていたシンタローくんが間抜けな表情になる。
そして僕の言葉を噛み砕くかのような数秒の無言の後、素っ頓狂な声をあげた。

「今完全にそういう雰囲気だっただろ!?」

『そういう』というのは多分、僕がシンタローくんをソファーに押し倒したことを言うんだろう。
間違ってはいない。だって十五秒前まで僕もその気だったし。
でもただ一つの挙動…シンタローくんはちょっと赤くなった顔で目を伏せて、僕の服の袖を引き寄せるように掴んだ。
それだけが問題だったのだ。
……かわいい、とは思った。でもそれは同時に、僕の気分を盛大に萎えさせた。
ごめんね、シンタローくん。

「やー、僕抵抗されないと燃えないんだよねー」
「めんどくせえな!!」

シンタローくんが激昂するのも尤もだ。
多分、羞恥からの逆ギレも混ざっているんだろう。
悪いとは思う。でもしょうがないよね、これ僕の性分だし。
如何にも『あなたのことを受け入れます』と言わんばかりのことをされたってまったく響かない。
むしろ募るのは、嫌悪と失望。

「嫌がるのを無理やり組み敷いて、泣いて拒絶するのを滅茶苦茶にしたいんだって」
「最低だな!!もう一度言うぞ、最低だな!!」
「あは、よく言われる。……ねえ、シンタローくん」
「……なんだよ」

憮然とした顔で睨んでくるシンタローくん。
そうそう、僕はそういう表情が好きなんだよ。
見下ろしながら、僕は言う。

「僕なんかを好きになっちゃ、駄目だよ」

シンタローくんの目が見開かれた。
その純粋な驚きと疑問が混ざり合った表情に、何故か僕は胸がすくような感覚を覚える。

「もっと僕を嫌って。嫌がって」
「……お前、Mだったのか」
「違うけどさ」

きっと、シンタローくんには理解できないだろう。
僕はそれでいい。別に、わかってほしい訳じゃないから。
でも、シンタローくんは違う。そうは思わない。思ってくれない。
多分僕も……もしかしたら本当は、そう思ってほしくは、ないのかもしれない。

「……ふざけるなよ」

苛立ちを込めた目で、低く唸るように呟くシンタローくん。
それでいい。君は僕を嫌えばいい。僕に溺れる君なんて要らないんだ。
瞳にまっすぐ僕を映して、シンタローくんが言葉を放つ。

「お前がなんて言ったって、俺はお前が好きだ。今更嫌いになんてなれるか。
……まあ、嫌ってるフリくらいはしてもいいけどよ」

今度は、僕が目を見開く番だった。
――ああ、そうだね。
シンタローくんは、そういう人だ。


「ほんっと……敵わないなあ」


僕は、そんな君を好きになったんだよ。
無意識の声にぽかんとしているシンタローくんの唇に、そっと口づけた。




愛したくて嫌われたいカノさん
嫌われてないと不安なカノさん
愛されたくないカノさん
でも嬉しく思うのが死ぬほど嫌なカノさん
わけわかんないですね、はい。



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