BL短編

□君と同じ思考を赦す
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※性的描写有、18歳未満閲覧禁止
※リコ様よりリク、「怪我してるのを欺いてるのがバレて鬼畜お仕置きなセトカノ」です
※読心プレイ?














……見えるのは自室の天井。
そして、愛しい幼馴染兼恋人の顔。
しかしその表情はいつもの朗らかで人懐こい笑みではなく、口元は弧を描いているものの目は嗜虐心に満ち一切笑っていない。
それがこの幼馴染の『キレた』表情だと言うことを、付き合いの長いカノはよく知っていて。

「……いい加減、体に教えてあげなきゃ理解できないみたいっすね?」

低く低く、どこか甘く耳に滑り込んでくるような声は、獲物を前にした獣の舌なめずりを連想させる。
肉食獣のような凶暴性を宿した、輝く真紅の瞳に射竦められて、
カノは「あ、喰われる」とまるで他人事のように、自らに訪れる未来を察知したのだった。



始まりは一週間前に遡る。


一週間前、カノは研究所に潜入する任務を成功させたものの、銃創を二つ脇腹に持って帰ってきたのである。
銃弾による傷なのだから、言うまでもなく重傷だ。
しかし自らの傷を「情けないもの」と認識しているカノは、あろうことかそれを欺き隠したのだ。

ただ、貫通傷の激痛を感じながらそれを隠し通すことはカノにも容易ではなく、
結局はセトにそれがバレて大目玉を喰らったのだが。
その際カノは、セトを始めとしたメカクシ団員全員の前で「もう怪我を隠しません」と子供のように宣誓をさせられた。
カノも懲りただろう、と当然メカクシ団の人々は思っていた。

しかし、その予想は覆されることになった。

それはたった二十分前の話。
それを一番に発見したのはセトだった。

リハビリも兼ねてコンビニへ買い物に行かせたカノが、帰ってきてから不自然に部屋に閉じこもった。
心配してセトが声をかけたところ、明らかに痛みを堪えているような声色の返事があったのだ。

拒むカノの部屋に無理矢理押し入って、セトは息を呑んだ。
カノの脇腹の銃創が再び開き、包帯と服を血で汚していたのである。

何をしてきたのか、と怒りが先行し過ぎて逆に無表情に近い様相でセトが問うと、
「いやー、ちょっと任務が不十分なまま帰ってきちゃったから、証拠隠滅…みたいな?」とカノはへらりとした声で返し。
ヘマして全力で走ったら傷が開いちゃった、と笑うカノに、セトは頭のどこかで「ぶちり」という音が鳴ったような感覚を覚えた。
恐らくそれは「堪忍袋の緒が切れる」という現象だったのだろう、とセトは思う。
そしてぶち切れた頭でカノを衝動のままベッドに押し倒し、今に至る。



「え…っと、セト、なんで能力使ってるの?」

カノを見るセトの瞳は赤く染まっている。
それは『目』に纏わる能力を発動しているときの特徴だ。
セトの有する能力は『目を盗む』能力で、平たく言えば相手の心を読む力である。
しかし本人は「人の心を盗み見るような嫌な能力だ」と嫌っており、滅多に使うことはない。
…いや、おかしい。なんで今その能力を発動してるんだ。
セトにはカノの思考が丸分かりなのだろうが、カノはセトの思惑をまったく理解できていない。
電気も点けていない薄暗闇の部屋の中で、まったく笑っていない赤い目がやけに目立つ。

「あの、さ、ごめん、悪かったよ。
もう傷は閉じた頃だし大丈夫かなーって思ってさ、」
「黙って」
「んっ…!?」

口を口でふさがれ、舌が口腔を蹂躙する。
着衣はその間にもセトの手により手早く乱されて、血に塗れた包帯が露になった。
ほんの小さな傷口に対して大袈裟な包帯は、左肩から胸と背中を通って脇腹や腹を覆い、幾重にも折り重なって巻かれている。
白い布帯を、セトは指で撫でるようになぞる。
赤く滲んだ部分に触れると、カノの口から呻き声が漏れた。

「理由なんて、どうでもいい」
「……っ」
「もう怪我を隠すなって、俺、言ったっすよね?でもカノはまた隠して、欺いて、俺を拒んだ。二度も」
「…っ、それはっ……」
「カノがひとりで抱え込もうとしてなければ、俺はこんなに怒ってない」

怒気を孕んだ声と瞳の重圧を真正面から受け、カノは自らの犯した罪の重さを知る。

紅色に輝く双眸。
それは明らかな怒りに満ちているけれど、ただ同時に確かな愉悦も混じっていて。

「……一応、怪我人…なんだけど」

カノは既に諦念の目で、蟀谷には冷や汗が伝っている。
悪足掻きを零した唇は、ささやかな抵抗の甲斐もなくまたふさがれた。

「お仕置きっすよ」



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