BL短編

□欺かないで
1ページ/1ページ





※ハイネ様よりリク「コノカノで甘」です







「カノ、好き」
「……ありがとう、僕も僕が好きだよ」



驚いて欺いて咄嗟に出る大嘘がこれってどうなんだろう。
自分なんて大っ嫌いだけどね。

朴念仁のコノハは僕の反応がお気に召さなかったのか、なんだか不機嫌そうな顔をして黙りこんでしまった。

……困った。
じゃあなんて答えればよかったんだろう。

「僕もコノハが好きだよ」?
…告白じゃないか、これ?
でも友達同士って意味だったら、改まると気色悪いけどまあアリだろう。
確かに無難なのはこっちだったかもしれない、反省。
ちょっと苦手とも思っていたコノハに告白モドキをされたせいでテンパったのだ。
よし、次は上手くやろう。
しっかり顔に飄々とした笑顔を貼り付け、コノハに明るい声で話しかける。

「ごめんごめん、冗談だよコノハ!
僕もコノハが好きだって」

するとコノハは渋い顔を更にしかめ、歩み寄ってきた。

…なんでだ。また機嫌を損ねたかな?
密かに冷や汗を浮かべて混乱していると、
真っ正面から服が擦れあうほどのゼロ距離までコノハは僕と距離を縮めて、ピンク色の澄んだ目で僕を見つめ、言った。


「欺かないで」


同時に手で顎を軽く持ち上げられる。
身長差も相俟って、僕は真上を顔ごと向くような格好になった。
こいつ無駄に背高いからなあ、羨ましい、なんて現実逃避な考えが浮かぶ。

……いや、そうじゃない。
今こいつはなんて言った?
ええと、そうだ、欺かないで、……と。
その意味を考える暇もなく、気付くと目の前にコノハの整った顔があって。



一瞬だけ触れた柔いものの感触も、最初に言われたセリフの意味も、
コノハが何故か今まで見たこともないような表情で微笑んでいる理由も、何もかもが理解できなくて。


「その顔が、見たかった」


朴念仁だなんてとんでもない、こいつは恐ろしいタラシだ。

恐らくは、微笑んだコノハが言った言葉が全てなんだろうけど、
それなのに何故か高鳴る心臓の鼓動すらも今の僕には理解できなくて、
欺けずに真っ赤に染まった顔にどうしようもない熱を感じた。




ハイネ様のみお持ち帰り可能です。
リクエストありがとうございました!



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ