□う
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いつからそうだったかは知らない。
今までがどうだったかも知らない。
でも、人生そんなものだと思う。


「なあ、お前知ってるか? 教授の噂」
「教授? 何の」
「あの人だよ、ほら、名前なんだったかな、あの…、コーヒーの」
「コーヒー? ……ああ、あの」

コーヒー、と聞いて思い浮かぶ人物なんて、この学校には一人しかいない。恐らく学校一コーヒーを飲んでいるであろうし、そして常にコーヒーの香りを纏っているからだ。

「で? その教授がどうした」
「なんか、すごい人と知り合いらしい」
「なんだその大雑把な情報は」
「画家? 舞台監督? 芸能人? …とにかく、すごいらしい」

噂好きの友達の、根も葉も無い情報に振り回される程こちらも暇じゃない。課題だって残ってるし、単位だって危ない。無駄なことはしたくないから留年だけは願い下げだ。

「落ち着いて出来る場所ないかなぁ」

早々に奴のお喋りから抜け出し、勉強する為の場所を探す。人がいなくて、静かで、少し暗めだったら即決なんだけど。そんな都合のいい所なんて無いでしょ。

「あ」

見つけたのは、旧校舎の一階、今は使われていない研究室だった。近くに大きな木もある、人はまばら。…見つけた、完璧だ、これで本腰入れて勉強出来る。そう思い、その扉を開く。

「……あれ」

眼前に広がる紙の山、そこかしこに置いてある何に使うのか分からない道具。そして、その人、コーヒー教授。

「教授…」
「…君は?」
「いや、すみません、失礼しました」
「コーヒー飲むかい」
「え?」
「コーヒー。いるかい?」

戸惑いながらも小さく頷くと、黒のマグカップにコーヒーを淹れてくれた。ちゃんと豆から挽いてるんだ。そりゃ匂いもするわ。しかし、改めてこの部屋を見渡すと、何がなんだかさっぱり分からない。この教授の専攻ってなんだったかな…。

「早く飲んだ方がいい。冷めたコーヒーほど不味いものはない」

そう言われて、喉に一口、流し込んだ。瞬間、広がる豆の香りと、すっきりとした後味。なんだこれ、今まで飲「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」

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