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□どうか
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彼から君を奪ってまで、
幸せになろうとは思わないから。
「竹内結子。
本名 同じ。
生年月日 1980年4月1日(33歳)。
出生地 埼玉県。
身長 164cm。
血液型 A型。
職業 女優…」
「なーに読んでんの?」
「え?Wi●ipedia」
久しぶりに結子がoffだと聞いて、私はケーキを持って結子の家に押し掛けた。
結子は「せめて連絡いれてから来てよー」と困った顔をしつつも家にあげてくれた。
そして今は遠慮なくソファの上でゴロゴロしてる。
「何で今さらWi●ipediaなんて見てるのよ」
「なんとなく」
結子がソファの隣の机にコーヒーを置いた。
ふわっと良い香りが辺りに漂う。
「あんたもそろそろ結婚したらー?」
「離婚した人に言われたくないですー」
結子がまったく、とため息をつく。
コーヒーを一口飲むとふんっとそう言ってやった。
「いつまでも独り身じゃ、私が死んだら一人じゃない」
「…だったら私が先に死ぬし、別に友達結子だけじゃないし」
「あら、私にとっては名無しさんが唯一無二の親友なんだけど」
「…」
結子が結婚したあの日。
私はすっぱり諦めたつもりだったのに。
結子の幸せな笑顔を奪ってまで、この想いを伝えることはやめようと思ったのに。
なんでこう、世界はうまく回らないんだろう。
「…そんなのこっちだって…だれよりも好きだよ」
「え?なんかいった?」
「言ってなーい」
でもやっぱり無責任なことはいっちゃダメって、この年になるとわかるからさ。
この想いは伏せておくことにするよ。
だから、どうか。
幸せくらい願わさせてね。
(「あ、ケーキ食べよ、ケーキ」
「それ持ってきた人が言う?」
「いーじゃん。結子の好きな店で買ってきたんだよ」
「それは嬉しいけど」)
Fin