黄瀬×テツナ(高校時代)

□最強キラー 2
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4回目の遭遇で、火神にも奴の行動パターンが読めてきた。
黄瀬と黒子は一週間に一度は会う、と決めているらしく、土日に会えるときは土日に、会えないときは平日に時間を作って、黄瀬が黒子に会いに来るらしい。
大体黄瀬は隔週で土日に仕事を入れるため、平日に来訪する頻度も隔週だった。だから、そろそろ危ないと分かっていた。
「火神っち」
分かっていたのに遭遇してしまった、自分の悲運さを呪った。


最強キラー 2


目が合って名前を呼ばれてしまえば、さすがに無視はできなくなる。
「…黒子なら当分来ねぇぞ」
「知ってる。メールもらったっス」
今日黒子は委員会で遅くなる。
多分それは数十分ではなく、数時間単位で遅くなる。
「…待つのかよ」
「待つよ。1時間でも2時間でも」
それこそたった数十分会うためだけに、数時間を無駄に過ごすと言う。
つい火神は口を開いていた。
「じゃあ俺と付き合え」


委員会は覚悟していたよりも早く終わった。
黄瀬から来たメールに従い、ストリートコートに着いた黒子は、そこでボールを片手に爽やかな汗をかく黄瀬と、滝のような汗をかく火神を見つけた。
「火神くんに遊んでもらってたんですね。良かったですね」
「黒子っち」
すぐに黄瀬が駆け寄ってくる。
「火神っちに『付き合って』って言われちゃった。これって浮気?」
「火神くんなら良いですよ」
「わーい」
「俺が良くねぇよ!」
息を切らして突っ込む火神を気にも留めず、黄瀬は飲み物を買いに行く。
黒子はえらくぐったりしている友人に近付いた。
「仲良いじゃないですか」
「付き合えってそういう意味じゃねぇよ」
「いえ、そのことではなく」
火神がなんとかして黄瀬との接触を避けようと四苦八苦していたことを知っている。そしてまた、その努力がどれ程無駄なことなのかも。
「早く観念しちゃった方が良いですよ」
「なんで」
「黄瀬くんは火神くんが好きだからです」
「だから?」
「絶対に、逃げられません」
それでも火神は納得できない顔をしている。
「火神くん」
黒子は言い聞かせるようにゆっくり告げた。
「黄瀬くんは、私の、彼氏ですよ?」
私の、を強調する。
恋愛なんてものからは遠く離れたところにいた黒子を捉えて離さない。
黄瀬からは絶対に、逃げられない。
的確に伝わったらしく、火神が青ざめた。
「こえー…」
「火神っち!」
黄瀬の声と共にごうっという効果音付きで缶が飛んできて、火神の頭に当たった。
「いで!思いっきり投げんな!」
黄瀬は反省の色なく、自分用に買った水を飲みつつ笑ってみせる。
「あげる。相手してくれてありがとう」
「…どーも」
火神が黄瀬からもらった(正しくは投げ付けられた)コーラの缶を開ける。途端に噴き出した中身が火神の顔を直撃した。
「………」
無言で振り返る火神に、黄瀬は良い笑顔で親指を立ててみせた。
「めっちゃ振っといたっス」
「振るなー!」
水分を欲しがっていた分、裏切られた衝撃も大きかった。
「もういい!お前の飲み物渡せ!」
「黒子っち黒子っち、火神っちが俺と間接ちゅーがいいって」
「ちゅーは駄目ですよ。虫歯がうつるから」
「うつんねぇよ!てか、ちゅーとか言うな!」
いちいち突っ込んでしまう律儀な火神を見ながら、黒子は忠告するべきか迷った。
火神は苦手だからきっと知らないのだ。
逃げるから、犬は追うのに。


fin 2012/11/13

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