■おかしなノリの話

□愛、減量中
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「ああ、僕も貰ったよ」
「俺も貰ったのだよ」
「俺もー」
「ちなみに紫っちはホールっス」
「すっごい美味しかった。黄瀬ちん大好きー」
抱きつく巨体を、黄瀬は嬉しそうに抱き返す。
あれ?バレンタインってなんの日だっけ?
青峰は自分の中の常識と、目の前の状況を見比べた。
多分そういうことだろうとは思っていたが案の定、黄瀬はキセキの皆にケーキを配って回ったらしい。
なんのためか。首を傾げる青峰の前に、黒子が立った。
「テツ?」
言葉もなく黒子が広げてみせた紙には、二本の棒グラフがあった。
「…なにそれ」
「黄瀬くんが貰ったチョコの数です」
良く見れば棒グラフには短い説明が書いてある。
一年目:137個。二年目:192個。
「三年目の今年に貰うであろうチョコが200を越えることは、アホでも…いや、青峰くんでも分かります」
「なんで言い直した」
「そんな大量のチョコを消費できるわけがない上に、ぶっちゃけ良く知らない人からの手作りなんて、怖くて食べれたもんじゃない。というわけで今年から導入されたのが―――」
「鳴くのなら、女子力見せようホトトギス作戦っス」
黒子の横に並んだ黄瀬は、青峰を見てふっと微笑んだ。
「そこまで言うのなら説明してあげよう」
「なんも言ってねぇよ」
「ホトトギス作戦は、黄瀬くんの規格外の女子力を見せつけることで相手の戦意を喪失させる狙いがあります」
「『なんか今年の黄瀬くんは、バスケ部の皆に超綺麗で超美味しそうなケーキを配ってるらしいよ』。『えー、それじゃあこんな出来損ないのチョコなんて恥ずかしくて渡せなーい』。ってことっスね」
「小芝居ムカつく」
「結果―――」
黒子は先程よりも細かなグラフが並んだ新たな紙を取り出して、青峰に突き付けた。
「午後5時現在、黄瀬くんが貰った手作りチョコの数は、去年と比較して7割減となりました。そして更に―――」
妙に熱く語る黒子は、最後の紙を掲げた。
「ホモ疑惑が流れたことで、市販チョコすら去年の2割減となりました!」
「やったね、黒子っち!」
二人は達成感に満ちたハイタッチを交わす。
―――本当にそれで良いのか。
青峰の思いは、言葉にならなかった。




「黒子っち、男の子からチョコ貰ったっス!」
「…無念…!」


fin 2013/2/19

来年は火神視点で高校編ですかね。
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