フェアゲーム

□コネタ_進学の理由
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黄瀬と青峰が誠凛に来訪する度に、見学者の数は減っていった。
理由は二つ。彼女持ちということが知れ渡ったためと、バスケをやらないためだ。
火神はシュート練の手を止めて、定位置となりつつある体育館の隅に目を遣った。
誠凛にあるまじきブレザー姿の二人組は、練習を見るでもなくジャンケンをしては指と顔を上下左右へと向ける。どう見ても『あっち向いてホイ』だ。
―――暇ならバスケやれよ、キセキの世代が…!!
火神はイライラしていた。
「火神くん」
バスケットボールを握り潰さんばかりの勢いに、黒子が待ったをかける。
「気持ちは分かりますが、落ち着いてください」
「だってあいつら、意味分かんねぇよ…!」
「意味なんて無いんです。気にしたら負けです」
「つか、こんなに会いに来るんなら、お前ら同じ学校行けよ!」
「そう、できたら良かったんですけど…」
至極もっともな突っ込みに、黒子は表情を曇らせた。
「はじめは同じ学校に行くつもりだったんです。しかし、キセキの世代を二人獲得したのなら、間違いなくその学校が高校最強となります。それでは面白くないと赤司くん…キセキの世代の主将が止めました」
「あいつらが素直に従ったのか」
とてもそんな殊勝な奴らには見えない。
黒子は思い出すように、遠くを見遣った。
「『これ以上文句を言うならば、テツナは京都に連れていくよ』と」
「…なんか、逆らえない感じは伝わった」
鋭利な刃物の音を聞いた気がする。寒気が、昇りかけた熱を急激に冷ました。
「でも、彼氏が敵だと戦いにくくねぇ?」
「いいえ」
練習に戻りながら問う火神に、黒子は即答を返した。
「今の私は誠凛のマネージャーですから。相手が誰であれ、チームのために全力を尽くすまでです」
言いながら黒子は転がってきたボールを拾い、差し出す。火神が受け取ったものは、多分ボールだけではなかった。黒子の意志が、火神の中に確かな熱を残す。こうなったらもう、黙ってなんていられなかった。
倒すべき天才たちは、すぐ目の前にいるのだ。


「勝負しろ」
火神の申し出に、黄瀬と青峰は訝しげな視線を送る。しかしすぐにその目には好戦的な光が宿った。
「いいぜ。ただ待つだけは退屈だと思ってたとこだ」
「じゃあ勝負!ジャンケン―――」
「『あっち向いてホイ』じゃねぇぇ!!」


2013/10/24

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