フェアゲーム

□カルチャーショック
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ざわつく体育館は、ただの新設校の部活動にしては異常なまでの人で溢れている。中には他校の生徒の姿すらある。
彼らは等しく、同じ言葉を口にしていた。つまりは、「キセキの…」と。
この異常事態の原因は、体育館の隅にある。なにをするでもなくバスケ部の片付けを見ている二人は、『キセキの世代』と呼ばれる中学最強校のエースだったと、マネージャーが教えてくれた。
「火神くん」
そのマネージャーは、スコアボードを押しながらこちらを見上げた。
「どうかしました?」
「いや…あいつら一体何なのかと思って」
火神と同じ方向を見遣って、黒子は答えを口にした。
「彼氏です。私の」
「あ、そうなのか」
それならば奴らがここに出入りするのも分からなくはない。
ふーん、と火神はいるだけで目立つ二人組に、改めて値踏みの目を向けた。
「で、どっちが彼氏なんだ?」
「どっちも」
そうか。両方か。
納得しかけて、火神はいやいやと思い留まった。黒子を見て、二人組を見て、もう一度黒子に目を戻して、問う。
「…どっちも?」
「どっちも」
返答は、変わらなかった。
黒子は力の抜けた火神の手からボールを奪い、篭にしまう。片付け終了と共に監督から部活終了の合図がある。
お疲れ様でしたとほぼ同時に、黒子は二人の元へと駆け寄った。火神が見たことのない笑顔で一言二言交わし、片方と手を繋いで片方と腕を絡める。
―――マジでどっちも彼氏かよ!
火神は一人戦き、絶望した。
ヤマトナデシコは滅んでしまったのだ。


「手を繋ぐことに不満なんてないんスけど」
三人並んで夕暮れ道を歩きながら、ふと黄瀬が口を開く。
「たまに腕組みが羨ましくなるっス」
「なんで?」
「胸が当たりそうで」
「なに言ってるんですか」
「そうだ、なに言ってんだ」
青峰は、これみよがしにため息を吐いた。
「テツに、当てるだけの胸があるわけねぇだろ」
「青峰くんは二度と私に触らないでください」




「青峰くんはどうせ、私の胸も黄瀬くんの胸もそんなに変わらないとか思ってるんだ!」
「青峰っち、俺のことそんな目で見てたんスか!エッチ!」
「見てねぇよ!」


2013/10/17

黄「寄せて上げれば俺だってなんとか…!」
青「ならねぇよ」

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