フェアゲーム

□1on2
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黄瀬からボールを貰い、それが勝負開始の合図となる。
青峰がただ勝つという目的のために注意を払わなくてはいけない相手は、黄瀬だけだ。はっきり言って黒子は役に立っていない。もはやマスコット、またはコートの妖精的存在だった。
しかし、黒子をまるっきり無視することはできない。彼女の現在位置は、常に把握していた。あの小さな体にうっかり接触プレーなど、あってはならない。そういう意味では、黒子はちゃんと青峰の戦力ダウンに貢献していた。
とはいえ、黄瀬を抜く支障になるほどではない。
クロスオーバーで黄瀬を置き去りにした青峰は、そのままシュートモーションに入った。ゴールへ、ひいてはその先にあるジャージプレイへ狙いを定めてボールを放る。その過程で黄瀬の鋭い声が飛んだ。
「黒子っち、今っス!」
黒子はゴール下にいる。そんなところから何かが出来るはずがない。分かっていたのについ目を向けてしまったのが、運の尽きだった。
黒子は自らのファスナーに手をかけると、勢い良く下に引いた。はらりとジャージの袷が解かれる。
当然、その下にあるのはTシャツだ。増えた露出なんて、僅かな首回り程度だというのに、視線は完全にその柔肌に誘導された。
―――しまった。
弧を描く黒子の口元に我に返るも時は既に遅し。意識の無い手から、あっさりとボールは消えた。
「…取ったー!」
黄瀬が両手でボールを掲げる。
「勝ったー」
黒子は喜びに両手を上げる。
ハイタッチをする二人を見ながら、青峰は敗北感と共に強く実感せざるを得なかった。
―――ミスディレクションは最強だ…。




「これが俺たちのバスケっス」
「悔しいけど勝てる気がしねぇ…!」


2013/2/12
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