フェアゲーム

□1on2
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「1on2ですか?」
「そう。黒子っちは俺と一緒のチームね」
黒子の体力アップの一環として提案されたのは、日課となっている二人の1on1に黒子を混ぜる、というものだった。戦力のバランスを考慮して、当然黒子は黄瀬と組むことになる。
黒子は窺うようにたった一人の敵チームを見た。青峰は片手でボールを弄びながら、不敵に笑う。
「いいぜ。二人でかかってこいよ」


コートに転がったボールを拾おうとした黒子は、そのまま倒れ込みそうになった。
「黒子っち、大丈夫?」
「…もう無理です…」
バスケ部エースについていくだけの体力が、ただのマネージャーにあるわけがないのだ。4戦目にして、黒子は精も根も尽き果てた。
「…休憩、ください…」
ぜーぜー言いながら、なんとか要望を口にする。黄瀬と青峰は仕方ないな、という笑みで了承してくれた。
黒子がへばっている横で1on1を始める二人はまだまだ余裕だ。こんなにも消耗しているのは黒子だけで、そんなにも頑張っているのに、大した戦力にはなれていなかった。
黒子に出来ることといえばパスの中継くらいで、ディフェンス時の存在感の無さは常の比ではなかった。多分、こっそり休憩していたとしても気付かれない。
正直、悔しい。
黄瀬と青峰の間にある僅かな実力差を埋める手助けすら、することが出来ない。4戦4敗という事実は、重い体を更に重くした。
ぼんやりと二人の1on1を眺める。青峰は持ち前の敏捷性を活かしてゴールを奪う。
もし、その意識を一瞬でも逸らすことができたのなら。
仄かに見えた光明に、気合いと共にやる気が湧いた。勢い良く上体を起こすと、黒子の復活に気付いた青峰が近くに来た。
「やれそうか?」
「はい」
青峰が伸ばしてくれた手に掴まり、立ち上がる。
「青峰くんのオフェンスからですよね」
「おう」
次彼を止められなかったら、勝負ありの10点目だ。それはなんとしてでも阻止せねば。
密かに張り切る黒子を見下ろす青峰は、良からぬことを思い付いた顔をしていた。
「次俺が勝ったら…」
気まぐれな指は上まできっちり閉められた黒子のジャージのファスナーをなぞる。
「ジャージプレイな」
「え」
もう脱がされた気分でジャージの前を握る。
よし、やるかーと肩に手を当てる青峰は、本気だ。黒子はいじめられっ子の気持ちで相棒に泣きついた。
「黄瀬くん、あんなこと言ってます」
「そうっスね。負けて悔いはないっス」
「駄目です」
同じチームなのに青峰寄りにいる駄犬の頭をはたく。黒子は言い聞かせるように、黄瀬の両手を取った。
「私たちのバスケを、見せてやりましょう」
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