フェアゲーム

□対比その2:青峰の場合
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黄瀬がいない部活は味気無い。日課となっていた1on1が無いため、必然と帰宅時間が早くなる。
とはいえ、熱心な自主練まで無くなるわけではないので、今部室にいるのは青峰と黒子の二人だけだった。
青峰の着替えが終わるのを待っていた黒子は、ロッカーが閉じる音を聞いて立ち上がった。
「じゃあ…」
帰りますか、に青峰の言葉が重なる。
「ヤるか」
「………は?」
立ち上がったばかりのベンチに座らされる。
「いやあの、ここ部室ですよ…?」
見上げた青峰は、にやりと口角を上げた。
「…だから?」
「………」
黒子は己が逃れられないことを悟った。


「っふ、…ん…っ」
ベンチに座ったまま、青峰のものを咥える。
頬を撫でられて目線を上げれば、満足そうに笑う青峰と目が合った。
「いいぜ。随分と上手くなったんじゃね」
褒められても嬉しくはない。黒子は目を伏せて、目の前のものに集中した。
すっかり硬度を増したものを確かめるように唇を這わせる。溢れた透明な液を追って先を口に含めば、青峰はひくりと震えた。
誰もいない部室に響くのは卑猥な水音と呼吸音だけで、酷く背徳的な気分になる。いけないことをしている、という思いは、やけに劣情を掻き立てた。
そしてそれは青峰も同じらしい。黒子の口淫に、いつもより顕著な反応が返る。
「っテツ…」
切羽詰まった声に呼ばれたと思ったら口を解放され、黒子はベンチに倒された。
「青峰く…」
今度は青峰の唇に口を塞がれる。思うままに貪られながら、青峰の指は黒子の下肢に伸びた。
ショーツの中に侵入した指で様子を確かめて、青峰はくっと笑い声を漏らした。
「…なにお前、俺のを咥えただけで濡れてんの?」
黒子の頬がさっと色付く。
青峰は足を開かせると黒子に覆い被さった。
「これなら大丈夫だろ。…入れんぞ」
「や、待っ…ぁっ!」
制止も聞かずに青峰は侵入を果たす。彼の言う通り十分潤んでいたらしいそこは、痛みもなく熱を受け入れる。
「ん…ぁ、あっ…や!」
黄瀬に抱かれるときのような、丹念な愛撫はない。けれど黒子には、中を穿つものだけで十分だった。
多分、青峰とは体の相性が良いのだろう。
二人は欲望をぶつけるように絡み合い、快楽に溺れた。


青峰と過ごす3日間は、そんな欲まみれな日々だった。
「あー…足りねぇ…」
着替えている最中にそんなことを言われて、黒子は困った顔で笑った。
「青峰くんはそればっかりですね」
「こんなんじゃ全然足りねぇよ」
不満気に吐き捨てた青峰に抱き寄せられる。耳元で、囁きが落ちた。
「ホントはずっと、テツに触れてたい」
黒子はぎゅっと青峰の腕を掴んだ。
分かっている。体を重ねるという行為は、青峰の愛情表現なのだ。想いをなかなか言葉にしない代わりに、彼は体温で語る。
「好きだ」
今日は珍しく口にまで出して、青峰は想いを伝える。
「すげー、好き」
大事そうに告げて、青峰は薄く笑う。
黒子は離れようとする体に手を伸ばした。
「青峰くん、私…」
言葉は途中で口付けに遮られる。
「返事は明日、な」
明日、もう一人の彼氏が帰ってくる。


2013/7/18

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