拍手お礼ログ

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※大学時代

何度目か分からない寝返りを打って、黒子はきつく目を閉じた。胸の前で合わせた掌は、眠りを誘う温度には足りない。
「…寝られない?」
こちらを向いた黄瀬が、冷えた手に触れながら問う。
「寒くて、眠れません」
「そっか…」
黄瀬が体を起こすと、ギシリとベッドが軋んだ。
「じゃあ二人で温かくなるようなこと、しようか」
黒子の顔の両脇に手をついて、黄瀬は微笑んだ。


「っ…黄瀬く…も、だめっ…です…」
「あと一回だけだから」
頑張って。汗の滲む頬を撫でられる。
「…う…っ」
腕が痛い。悲鳴を上げる筋肉に鞭打って腕を曲げる。あとはまた腕を伸ばすだけだが、できない。異常に体が重い。
「さあ頑張って!黒子っちならできる!大丈夫!本気を出して!」
「…笑わせ、ないで…っ」
なんでいきなり熱血キャラなのか、なんでこんな時間に筋トレをやらされているのか。
腑に落ちないことは色々あれど、とりあえず黒子はやりきった。腕立て伏せ10回を、見事成し遂げた。
「えらいえらい」
ぐしゃりと崩れ落ちた黒子の頭を撫でる黄瀬は、とっくにノルマの30回を終えている。
思うことは多々ある。あるけれど、黒子はフッと微笑んだ。
「…そんなストイックな黄瀬くんが、好きですよ」
「ありがとう」
黄瀬からも爽やかな笑みが返る。
黒子はただただ満足を抱え、気を失うように眠りに就いた。


彼女が眠りに落ちるまで 〜冬〜

fin 2013/2/6
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